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2016年8月21日日曜日

UFC 202: Diaz vs. McGregor 2 感想

Welterweight Conor McGregor vs. Nate Diaz Decision
 マッグレガが無差別級のような試合をして、もし二連敗して、まして頭部にダメージを受け壊されでもしたら格闘界の損失ははかり知れない、とおもわれたので私はこの試合はあまりやってほしくなかった。マッグレガが頭部に重篤なダメージを受けぬことを祈って観ていた。
 近年はマッグレガとの対戦でネイトがすっかり株を上げた観があったが、しかし同じ階級の他の選手と比較したらネイトはそんなにパッとした選手でもないとおもう。みごとに進化してマイケル・ジョンソンに勝てたじゃないか、などと誰かが言っていたが、ジョンソンはたしかにライト級の中堅どころとしては好選手として評価されても、戦績をみるとパッとせず、階級のトップクラスという感じでは決してない。結局のところネイトのキャラクターでもって話題性を生んで儲けてるような試合、私はあまり好きではない。
 しかしマッグレガがやるというのならもちろん観る。マッグレガの試合は相手がだれであろうと全部観たいからだ。

 私は今回もマッグレガは序盤からよく斬れるパンチを当てていくであろうとおもっていたし、前回のように立ちにこだわらずクリーンヒットがあれば一気に畳み込んで、早い回でネイトをノックアウトしてしまうのではないか、という予想であった。
 
 蓋を開けてみると、たしかに初回からマッグレガの左が冴えに冴えていたが、左のローキックを頻繁に出していたのは瞠目であった。左のロー、右のボディーアッパー、そしてネイトが右を出せば合わせるように左のクロスを伸ばし、初回に二度ほどネイトが尻もちをつくように倒れる場面があった。

 後半、マッグレガには疲れが出てネイトに推される危ない場面は何度もあった。しかしそれでも最後までマッグレガは足をよく使い、自分の距離で闘うことに徹していた。それが今回の勝因だろう。
 予想と違ったのは、倒れたネイトに接近することさえ避けていたところだろう。グランドで組んでパウンドとか、そういう泥臭いことはせず、最後の最後までマッグリガは寝技を避けていた。あざやかなパンチでスパン!と倒したネイトに対して、襲いかかることをしなかったのは余裕でもなんでもなく、本当にグランドの攻防には自信が無かったのだろう。その辺がマッグリガの弱点であり、それは階級をもとに戻しても相手はどんどん研究してくるだろう。つまりフェザーに戻ったからといってマッグレガの覇権がさほど長く続くともおもえない。

 なんとかマッグリガが判定で勝利した好試合であったけれども、同時に格闘家としてもマッグリガの壁がはっきりと見えた試合でもあった。


Light Heavyweight Anthony Johnson vs. Glover Teixeira
 一見、ランク的に実力伯仲した試合のようでもあるが、相撃ち上等で打ち勝つテシーラは防御が甘い。そこらへんの選手ならテシーラが打ち勝つことはできるだろうけど、ジョンソンのような斬れのあるパンチをもった選手にはかなり危険なのではないかと予想していた。

 そしたら案の定、下がるジョンソンに対してぐりぐりと前に出て、そこにジョンソンが待ってましたとばかりに合わせたアッパーをまともにもらっていた。いつもならパンチをまともにもらいながらも、かぶせるように強いフックを当てて打ち勝つ、というのがテシーラの勝ちパターンだったが、ジョンソンの強打をあそこまでまともにもらえばさすがのテシーラも意識を保てないだろう。

 アッパーで口中のマウスピースがずれて、テシーラの下顎部が不自然に歪んでみてた。下顎を骨折したのではないかとさえおもったが、勝者コールの頃になるとケロッとしてすがすがしい顔をしていた。やはりテシーラのタフネスさは尋常じゃない。


Welterweight Donald Cerrone vs. Rick Story
 リーチでも上背でも勝っているし組んでもやっかいなセローニに対し、ストーリはかなり苦戦するのではないかとおもっていた。またセローニのような選手相手に苦戦してしまったら、まず勝ち目はないのではないかとおもっていた。
 
 ところがいざ試合が始まってみると両者ともよく攻防がかみ合って、序盤はどっちが勝ってもおかしくないような展開であった。だけど打撃の応酬のなかでアジャストしてゆくセローニが次第に主導権を握るようになり、最後は圧倒してしまっていた。左ジャブ、右ボディー、左フック、右のハイキックという連続打撃。リアルで鉄拳のようであった。


Welterweight Mike Perry vs. Hyun Gyu Lim
 韓国の好青年リムが対峙するペリーは6戦全勝6KOの24歳、面白そうな選手だとおもったがしかしウェルター級にしてはあまりに身長が低く四肢も短かった。総合格闘という分野でペリーのような豆タンク的選手が通用するは思えず、私はリムの勝利を予想していた。

 背のひくいペリーの突進を見越してか、リムはアッパーを合わせようとしたり、膝を突き上げたりしていたのが見て取れた。が、ペリーの踏み込みが鋭かったのか、あるいはリムのうごきそのものが遅かったのか、突き上げるタイミングがまるで合わず、ペリーの踏み込んだ力強いパンチがリムの顔面にまともに当たり、終わってみればペリーが圧倒したかたちとなった。

 ペリーはこれで7戦7KO勝ちという華々しい戦績を継続することとなり、次の試合が楽しみな選手である。

 
Welterweight Tim Means vs. Sabah Homasi
 若いホマシはアメリカントップチームで鍛えられているとのことで、どれだけ強い選手なのか注目であったが、UFCデビューの相手が曲者のミーンズというのはちょっと不運なのではないかと思って観ていた。

 序盤からホマシがいかにも優等生的なボクシングでもってパンチをしばしば当てていたが、しかしミーンズは頑丈でありなかなかダメージを与えられない。一度グラウンドの攻防でホマシが上になったが、相手の腕にエルボーを当てるというのも、えげつないなミーンズであった。
 最後は血の匂いを嗅ぎつけたミーンズが、ホマシに襲いかかり屠るかのようであった。


Bantamweight Cody Garbrandt vs. Takeya Mizugaki
 ガーブラントは高校時代はレスリングで全米トップクラス、またアマチュアボクシングでも華々しい戦績をもっており、近い将来かならず王者になるであろう格闘界の若きホープ選手である。一方の水垣はこれまでぶつかり合うような泥臭い勝ち方が多く、ガーブラントのようなスピードも破壊力もある選手が相手となるとかなり難しい試合になるのではないかとおもっていた。スピードにも明らかな差があり、初回からガーブラントが圧倒して早々と決着がついてしまうのではないかとおもって観ていたし、実際ほとんどの人がそういう予想だったのではなかろうか。

 結果はそのとおりとなった。水垣選手としてもベテランであり伸びしろのある選手というわけでなく、あれが彼の限界という感じであった。


Welterweight Lorenz Larkin vs. Neil Magny
 マグニーは距離をとってチョンチョンと当ててゆく試合をすればなかなかつよいが、破壊力のある打撃をもったラーキンが相手となると打ち合いでは勝てる見込みはなく、組んで抱え込むように極めてしまうしか勝ち目はないのではないかとおもっていた。

 結果、マグニーもラーキンの打ち合いに付き合ってしまい、屠られてしまった。