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2015年6月28日日曜日

UFC Fight Night: Machida vs. Romero 感想

Middleweight Lyoto Machida vs. Yoel Romero
 懸念していたとおりのことが起こった、という感じであった。

 マチダはこの試合も距離を大きくとってよくフェイントを交えつつロメロの出鼻に速いパンチや蹴りを当ててゆこうという、いつもの戦法であった。じりじりと前にでるロメロのプレッシャーを避けるようにして、いつもより狭いオクタゴンのケージ際を周回していたマチダであった。
 かつては『うごきを読みにくい(illusive)』と評されていたマチダだが、さすがに何年も変わらずのスタイルではワンパターンであり、研究されれば攻略されてしまうだろう。この日もいつもととくに変わり映えもせず、持ち駒は踏みこんでの打撃のみ。いくら相撲がつよいといっても、それはディフェンスのみにいえることで、組んで攻撃につなげるということをしない。
 対するロメロは、レスリングは五輪メダリストのレベルであり、打撃も申し分ない破壊力があり一発で相手を眠らせられる。現代格闘では引き出しの多いロメロのような選手が活躍する時代ということなのだろう。
 マチダも空手に柔術に相撲と多種にわたって玄人であるのだが、組み技は防御にのみ使われるだけで、攻撃はどうしても空手流の打撃だけである。マチダのような選手は、少なくとも男子の現代格闘においては、もはや時代遅れなのでろう。

 力のあるロメロがマチダを捕まえて力まかせに倒し、ゴリゴリと削って決着がつくのではないかと予想していたが、その展開は予想以上に速かった。ロメロが強引に力まかせに行ったのだとしたら、相撲上手のマチダならしのげただろう。ロメロが組んでからが猛烈に速かった。組んだとおもったら、一瞬でマチダをマットに倒し、寝かしつけた。こういう流れるような動きが瞬時に出せるというのは、トップレベルのレスリング能力が体にしみ込んで初めてできる芸当なのではないか。
 また、レスリングの専門家のロメロだが、序盤から最終ラウンドまでずっと打撃戦であり、組みに行くそぶりすら見せなかった。最後の最後で一気に勝負をつけんとするところまで、レスリングを温存してたかのようであった。マチダはあっさり倒された。倒されると、マチダは弱い。結果は見てのとおりである。

 ロメロは運動能力が高い反面、筋肉量が多くスタミナに懸念があると以前より指摘されていた。もちろん年齢的なこともあるだろう。しかし意外なことに最終ラウンドでのTKO勝ちが多い選手でもある。
 まるで燃料タンクが二つあるかのようだが、これは自身の運動機能の生理的な違いを体験的にしっかり使い分けている、ということだろう。有酸素運動という持久戦においては人並みな消耗疲弊が目に見えてわかるが、勝機をつかむやいなやいつでも無酸素運動に移行できる選手であり、それがあの特徴的な瞬発力、爆発力となって、相手を圧倒するのだろう。まさに、火事場のクソぢから、である。これがロメロのつよさの一つの大きな特徴だろう。
 
 最後に、ロメロの精神性について触れておきたい。
 ロメロは自身を『神に選ばれた兵士』と呼んでいる。そういう精神性がないと、あそこまで狂気じみた攻撃はできないのではないか。執拗な肘によって、マチダの顔面はぐちゃぐちゃにされた。常人にはあそこまで人間の顔面を破壊できるものではない。まるで人間性を失った戦場の兵士ような無慈悲なまでの肉体破壊。もちろんトップランクの選手ならばそういう選手はいくらでもいるが、文明圏でぬくぬくと暮らしている常人にはとても出来ない芸当だとおもうし、そういう部分が傑出している点もロメロのつよさの秘密ではなかろうか。倒した相手へ与えたダメージを心配して駆け寄るマチダとは対照的である。


 では、ロメロは無敵なのか、ということになるが、私はそんなことはないとおもう。
 今回のマチダの敗北のいちばんの原因は、ロメロのつよさ以前に、マチダの劣化にあるとおもうし、それは年齢的なものだけでなく、前の試合で脳にうけたダメージによるものだとおもう。全盛期のマチダ、エヴァンスを倒した頃のマチダならば、ロメロにもじゅうぶん勝てていたのではないか。
 
 ロメロとジャッカレとの対戦がまた注目されるようになり、おそらく今年中には行われるのではなかろうか。そうなれば私は速さにおいても持ち駒の数でもトップレベルにあるジャッカレの方がつよいとおもう。

 
  

 

2015年6月24日水曜日

UFC Fight Night: Machida vs. Romero 予想

Middleweight Lyoto Machida vs. Yoel Romero
 ついこないだルーク・ロックホールドに完膚なきまでノサれたマチダであるが、頭部にかなりのダメージを負っていただけに、再起するにはあまりにも間隔が早すぎるのではないか。
 ロックホールドの体重ののった肘を側頭部に受けたマチダは、初回終了後フラフラして、まともに立っていることができなかった。一時的に聴力を失っており、セコンドの言ってることがまったく聞こえなかったという。
 そういう選手がロメロのような破壊力をもった百戦錬磨の選手と対峙して、勝てればいいが、もし負けてしまった場合、うけるダメージは尋常ではないだろう。
 マチダがとほうもない勇気の持ち主なのか、あるいは無鉄砲なのか。
 自信があるからこそ対戦するのだろうが、リョート・ファンの私としてはとても心配である。

 マチダはこの試合も距離を大きくとってよくフェイントを出し、ロメロの出鼻に速いパンチや蹴りを当てていくという、いつもの戦法だろう。
 力のあるロメロはマチダを捕まえて、力まかせに持ち上げるなりして倒し、ゴリゴリと削っていこうとするのではないか。タヴォーレス戦では陽動的な二段前蹴りで相手を下がらせておいて、そこへ強引に踏みこんでゆくという連続技で、立ち位置のとり方のうまいタヴォーレスを完全に崩し、破壊した。
 そういう攻めが果たしてマチダに通用するのか、ということなのだろうが、私は通用するとおもう。マチダは攻められ劣勢になったときに負けん気で我武者羅に盛り返す、というタイプではなく、やや固まってしまう悪いクセがある。一発でもロメロの強打を頭部に受ければ、腰が落ちるだろう。一旦そうなってからマチダが逆転できるとはおもえない。ましてロメロといえば、勝機をつかめば興奮して脱糞してしまうような男であり、鎧のような筋肉は飾りではない。こういう選手に対してひとたび劣勢になると、かなり危険である。

 頭部打撃に対するマチダの反応は近年かなり鈍ってきたようにみえるし、度重なる頭部へのダメージからここで一発でも打撃を頭部に受ければ、それで意識は飛んでしまいかねない。相撲上手のマチダだが、ロメロのような怪力の相手に踏みとどまれるのか。
 マチダに勝機があるとすれば、距離をとっての根くらべでロメロが疲弊した場合ぐらいしか思い浮かべられない。

 残念ながら私はマチダが勝てるとはおもえない。
 ロメロによるノックアウト予想。
 マチダはこれで引退だろう。

 
 

2015年6月20日土曜日

UFC Fight Night: Jędrzejczyk vs. Penne 感想

Women's Strawweight Joanna Jędrzejczyk vs. Jessica Penne
 実に見ごたえのある試合だったが、ヨアナが圧倒的なつよさをみせた。
 『打撃がナマクラな女子格闘はつまらない』という先入観を根底から覆すような、ヨアナのパンチであった。回転が速く、そして強力で、回を追うごとにその斬れ味は増していったようにみえた。ヨアナはボクシングでも王者になれるのではないか。
 パンチだけではない。ジェシカに最大の致命傷を与えたのは離れ際の右肘一閃だろう。鼻骨わきに部分にかなり深い裂傷を与え、別人の鼻のように大きく腫れあがっていた。

 ヨアナのパンチばかり気になるが、彼女のフットワークもバランスも、実にいい。相撲もつよく、相手がむしゃぶりついてテイクダウンに手間取っていると、上から鉈のような肘が飛んでくる。
 しばらくはヨアナが王者として君臨するだろうが、女子ストローはとにかく層が厚く、粒ぞろいである。ロンダ・ラウジーのような無敵でいられるかどうか今後も注目してみたい。


Featherweight Tatsuya Kawajiri vs. Dennis Siver
 川尻は序盤から大きく距離をとって、おもむろに変則的なアッパーカットや、大きな後ろまわし蹴り、パンチとバックブローの連続技などを出したり、あるいは試合中に意図的に目をそらしたり(輪島功一氏がやった作戦)などと様々に攪乱翻弄してみせたが、中盤以降はシーヴァの脚にむしゃぶりつくようにして抱きつきテイクダウンとカウントしてもらえそうなのをいくつか決め、みごとに判定勝利を収めた。
 その点、シーヴァはパンチも蹴りもことごとく川尻に誤魔化され、まったく冴えなかった。

 川尻の見事な勝利であったが、試合内容は決して見栄えのするものでなく、いくら勝ったとはいえ印象は決して良いものでは無かっただろう。あんなはっきりしない試合ばかりでは、川尻がいくら勝ち星を続けることができたとしてもファンでもなんでもない観客には魅力には映らず、愛想をつかされてしまうのではないか。もっと見どころ多い試合をしないと今後UFCに居続けるのは難しくなってゆくだろう。
 さらに言えば、今どきの格闘では打撃をもっていない選手は流行らないのであり、またあれでは上位にもまったく通用しないのではないか。引退前に一花咲かせられればいいんだ、というレベルならそれはそれで結構だが、しかしUFCでもっと上を目指すのなら何かステートメントのある勝ち方ができないと、世界では人気は出ない。
 
 とか書くとまるで川尻選手を嫌っているみたいだが、どんな気持ちで試合をみていたかは私のツィートを参照していただきたい。
 

UFC 188: Velasquez vs. Werdum 感想

 まだ試合を観ていないのだが、結果も状況もだいたい知っている。
 入念に対策を練り人事を尽くしたウェルドゥムがヴェラスケスを見事にギロチン・チョークに極めたとのこと。
 
 ―――

 一週間たって、ようやく録画を観ることができた。

 ヴェラスケスが初回から全開で攻めていってる。ドス・サントス戦では意地の対決という面もあり、両者は初回から全開で立ち向かい、また両者の歯車はよくかみ合ったかんじがした。その上でヴェラスケスの方が力で勝さっていた。

 この試合も、前回のドス・サントス戦とよく似た立ち上がりであった。が、なんだか観たかんじ雑なように見える。先入観でそう見えるだけなのかもしれないが。ヴェラスケスはウェルドゥムをやや甘く見ていたのではないか、というかんじさえした。
 ヴェラスケスはさほどウェルドゥムを恐れてはいなかったのではなかろうか。ウェルドゥムといえば柔術師であり、過去の試合の録画を見返せばパンチは実にナマクラであった。レスラー出身の格闘家はエリートになればなるほど、レスリングがつよくてその上でボクシングができる選手を恐れるフシがある。コテコテの武道系格闘家なにするものぞという見くびりがあったのではなかろうか。
 
 ウェルドゥムを褒めよう。
 ヴェラスケスの突進に対して一歩も下がらなかった。最後は待ってましたとばかりに狙いすましたような絞め技だったが、勝因はそれではなく、むしろ序盤から続いた打撃戦で一歩も下がらなかった点だろう。
 いつもの回転の速く相手の中心線に集中するようなヴェラスケスのパンチが、この日はぜんぶ振り回すように外から出ていて、不正確であったようにみえた。それと比べるとウェルドゥムのパンチは小さく、自分の体幹正中線から相手の体幹正中線へと真っ直ぐ正確に飛んでいった。軽く出しても体重が乗っている。ヴェラスケスが強振してきても、まったく恐れをみせず、それによろこんで応じるように相撃ちに出て、また、しっかり先に当てていた。打撃とくにパンチでウェルドゥムの方が上手かった。これがまずヴェラスケス陣営にしてみれば最大の誤算であったろう。
 ヴェラスケスの前進に対してはタイ・クリンチで徹底していた。中量級では当たり前の防御であり攻めであるが、ヘビー級では珍しいかもしれない。 膝を突き上げるだけでなく、体重を相手の首に預けるようにして、ヴェラスケスのスタミナを奪っていった。
 
 はっきりと、ヴェラスケスの完敗であった。
 高地順応の所為だという声もあるが、高地で生活すれば赤血球の量は増えても、疲労が抜けぬために激しいトレーニングをするのは難しいときく。だから勝因は必ずしも高地のせいだけではないと思う。もちろん、やれることをすべてやりつくしたウェルドゥムの精神面での充実は大きいとおもわれるが。
 ヴェラスケスが低地で練習を続けたのは、単に高地を甘くみていたのではなく、それはそれで意味があったのだろうとおもう。打撃にいまいち爆発力の感じられないウェルダムはヴェラスケスの強いプレッシャーを伴った打撃戦では敵わないだろう、と我々ファンが予想していたように、ヴェラスケス陣営も同様な予想をたて短期決戦という意気込みがあったのではないか。それで低地トレーニングによる瞬発力に期待したのではないか。ヴェラスケスの試合展開もそんなかんじであった。

 しかし作戦としては、失敗であった。ウェルドゥムの方がよく研究してきており、ヴェラスケスのすべてを正面から封じ、打ち勝って、絞め落とした。見事な勝利であった。
 幸い、ヴェラスケスが頭部に受けたダメージは軽微であり、次の試合への影響は少ないであろう。次回のヴェラスケスはもう少し慎重に行くのではないか。
 

2015年6月9日火曜日

UFC 188: Velasquez vs. Werdum 予想

Heavyweight Cain Velasquez vs. Fabrício Werdum
 ミノタウロを瞬殺し、レスナーに泣き声をあげさせ、ドスサントスを二度にわたってグロッキーにさせた男が、ようやくオクタゴンに帰ってくる。コンパクトに真っ直ぐ伸びる右ストレートには体重がのっておりその威力は総合格闘一と言われている。全米トップクラスだったレスリング能力もヘビー級において卓越しているケイン・ヴェラスケスの登場である。対戦相手はいわゆる大物食いと呼ばれる曲者ウェルドム。
 
 過去の対戦を思いかえせば、問題なくヴェラスケスの方がつよいだろう。レスナー健在のヘビー級全盛期の頃からドスサントスとヴェラスケスのつよさは抜きんでていたし、その両者は三度にわたって対戦し、二戦目、三戦目でヴェラスケスが完全に圧倒し、ドスサントスを壊してしまった。
 一方のウェルドムといえば、ドスサントスの出会いがしらのアッパーで沈んでおり、Strikeforce 時代にオフレイムのようなハートの弱い選手と全く冴えないつまらぬ試合をしての判定負け。終盤に逃げまわって僅差の判定勝ちを得て大喜びしていた試合もあったことから、あまり私の好きな選手ではない。

 ウェルドムが勝てるとしたら、何か意表をついた一撃なり絞め技なりで一発逆転できたときだろう。こないだのブラウン戦でみせたようなアウトボクシングをしてもヴェラスケスには通用しないであろうし、組んでもベラスケスに相撲で勝てるとは思えない。また、スタミナを比較したら、両者にはかなりの開きがあり、回を追うごとにウェルドムは下降してゆくのではないか。
 ウェルドムによる逆転劇があるのではないか、と PRIDE 時代からのファンの方々は思われているかもしれないが、公平に採点を振り分けていけばヴェラスケスが明らかに実力が上だろうと私はおもう。

 どちらが勝つにせよ判定で終わることはなく、私はヴェラスケスが早い回にてノックアウトと予想したい。


Lightweight Gilbert Melendez vs. Eddie Alvarez
 強いハートでぶつかり合いにめっぽうつよいアルヴァレスだが、メレンデズもレスリングの専門家であり強打をもっている。これはいい試合になるのではないか。
 
 判定でメレンデズ予想。
 

Middleweight Kelvin Gastelum vs. Nate Marquardt
 ウェルター級ではウェイトが苦しいガステラムが前回は減量に失敗して初の敗北を喫した。いつまでも前へ出続けるつよいカーディオとレスリング力で、このところ明らかに下降線上にあるマーコートを圧倒するだろうとおもう。

 ノックアウトでガステラム予想。
 

Flyweight Chico Camus vs. Henry Cejudo
 フライ級王者マイティマウスにとってもっとも危険な男がこのセフードではなかろうか。
 レスリング北京五輪金メダリストであるだけにレスリングは無敵であり、歴戦を勝ち抜いたアスリートだけに勝ち気も根性も尋常ではない。パンチを出せば真っ直ぐ相手の中心線にむかって連打が飛んでゆく。
 前回、相手を圧倒したにもかかわらず本人にとっては不本意な内容だったらしい。この試合で満足のいく結果を出すだろう。

 ノックアウトでセフード予想。



2015年6月7日日曜日

UFC Fight Night: Boetsch vs. Henderson 感想

Middleweight Tim Boetsch vs. Dan Henderson 
 ボウチは一世一代の試合と、試合前の記者会見からして気合がここまで伝わってくるようであった。私はボウチが圧倒するだろうとおもっていたのだが、ここまでみごとにヘンドが勝つとはおもってもみなかった。

 試合前のヘンドのインタビュー映像など見るに、いかにも老けたかんじさえして、目線も焦点が合っているんだか怪しく、言葉の滑舌もわるく、過去の数試合でのノックアウト負けの後遺症がかなり進行しているのではないかとさえおもわせるようなかんじだった。この試合でボウチの強打でもってノックアウトされてしまったら、選手生命どころかこの後の日常生活にさえも支障をきたすのではないかとさえ深読みしてしまった。

 が、試合が始まれば、ヘンドのうごきは良かった。自信満々で前進してくるボウチに対して、ちょっと下がって誘い、踏みとどまって、おもむろに右が文字通り、ぱぁん!と真っ直ぐ入った。そしてさらにもう一発、得意のオーバーハンドではなく、真っ直ぐな右。そしてあのヒョードルを倒した場面をソウフツさせる右のアッパーカット。そして機械仕掛けのような無心の連打。ボウチの額が割れ、ヘンドも右こぶしを傷めたらしい。

 これまで「よっこらしょ」と野球の投球のように大きく反動をつけて放っていた右のオーバーハンドが H-bomb と呼ばれ、必殺技として恐れられていたわけだが、モーションが大きく相手に読まれ、不発に終わる試合が続いていた。体重の載った右をもっといつでも出せるようにとボクシングの基本に返って右ストレートを練習してきたのだろうか。それくらいコンパクトに中から真っ直ぐ出た、いかにも丹下段平が絶賛しそうな、みごとなパンチだった。
 
 ボウチはずっとランクを登ったり下りたりで、ここでヘンドに勝ってはずみをつけようと自信をもって臨んだだけに、負けたのは残念であったろう。序盤から足をつかったり、相撲をとったりして、老齢なヘンドのスタミナを削ってゆくような作戦でいけば、あるいはボウチが圧倒していたであろう。それをせず、試合開始と同時に真正面から向かっていったボウチは、えらい。


Heavyweight Ben Rothwell vs. Matt Mitrione 
 私は、総合格闘において腕力やタフネスさほどアテにならないものはなく、とにかくスピードこそが、という信仰をもって観戦しているのだが、この試合でもやはり手の速さに定評のあるミトリオーネが圧倒するだろう、と予想していた。
 いくらロスウェルが頑丈な選手とはいえ、重量級のパンチが一発でも先に当たった方が勝つだろうとおもっていた。

 実際、試合がはじまってミトリオーネの方がよく足をつかい、ぽんぽんと軽いパンチを当てていた。軽いといってもKO率が9割ちかい選手であり、あたれば確実にダメージがいくだろう。ロスウェルはべた足の仁王立ちで、相手の方を向いて回るだけであった。やはりミネストローネか、とおもっていたところでミトリオーネが組んで中途半端なテイクダウンを試みたのが命取りとなった。ロスウェルがぐいと締め上げるようにしてタップアウト。

 試合よりも、試合後のインタビューのロスウェルの「むぁはははは!」という作り笑いの方が印象ぶかかった。会場は一斉にドン引いていたが(笑


Lightweight Dustin Poirier vs. Yancy Medeiros
 当てカンがよく打ちあいにめっぽうつよいポリエであったが、今日もまさにそんなかんじの勝ち方だった。リーチあるメデイロに対して踏み込んでみごとに右のクロスを当て、さらに左をアゴにクリーンヒットさせて、メデロは完全に脚にきていた。そこから打撃でたたみかけるかとおもったが、体がもつれて寝技に移行し、メデロはダメージから回復できるかにみえたが立ってからもダメージは残っており、また同じようにポリエの連打が面白いようにあたっていた。
 地元で快勝できて気分もよかったであろう。
 

Featherweight Thiago Tavares vs. Brian Ortega 
 この試合が今回のベスト・バウトなのではないかとおもっている。
 両者ともに柔術を得意としており、絞め技による勝利が多いのだが、タヴォーレスはパンチで勝った試合も多いことで、ここは打撃もできるタヴォーレスが断然有利なのではないかと予想した。
 実際タヴォーレスのパンチの方がソリッドであり、序盤からよくプレッシャーをかけて積極的だったのもタヴォーレスだった。タヴォーレスのテイクダウンも何度かきまり、オルテガが腕をつかんで十字や三角締めを狙ってもまったく動じることなく防いでいた。

 ポイント的には初回、二回ともタヴォーレスだったのだろうけど、オルテガのグランドでの防御といい、フルマウントされてからのエスケープといい、実に見事だった。タヴォーレスの王道の攻めに対して、オルテガはまさにケンカ上手というかんじで、床を背にしたまま切れ味のある肘や拳のナックルパートでなく剥き出しの指第二関節をを何度かオルテガの額に当て、皮膚を割っていた。
 タヴォーレスの出血量は尋常でなく、運動能力を持続する上で無視できぬ量だったのではなかろうか。しだいに反応が鈍っていくようになり、最後はパンチが無いと思われていたオルテガのパンチがまともに入り、いっきにパウンドで試合を決めた。オルテガの見事な勝利であった。
 24歳であれだけ辛抱づよい闘い方ができ、まるでケンカの天才と呼びたくなるようなえげつない肘の出せるオルテガという選手、将来有望である。フェザー級は層が厚い。


Bantamweight Joe Soto vs. Anthony Birchak
 寝技主体のバーチャク、組んでいくのかとおもいきや立ち技の打撃一本ですばらしい攻めをみせていた。


Bantamweight Francisco Rivera vs. Alex Caceres
 両者ともにユライア・フェイバーに倒されているという触れ込みだったが、リヴェラはフェイバー相手にいい試合をしていたのに目を突かれるという実に不運で残念な結果に終わってしまったわけで、決してカセレスのように弱い選手ではない。
 リヴェラが勝つだろうとおもって観ていた。

 カセレスはパンチにまったく力がこもっておらず、あれでは誰だって喜んで相撃ちに応じるであろう。リヴェラがこれでもかとばかりに踏み込んで右のクロスを当て、左のフォローでカセレスはばったり倒された。その後パウンドまでもつれたが、はっきりとわかるリヴェラの勝利であった。
 運気復調のリヴェラの次に注目したい。
 

Heavyweight Shawn Jordan vs. Derrick Lewis
 体躯も大きく12勝のうち11KOというとほうもない強打のルイスであり、ジョーダンのようなアンコ力士体型の選手では敵わないだろう、とおもっていた。
 序盤ジョーダンは半端な距離を避け、距離を大きくとるか、おもいきって跳びこむんで倒しにかかるかではっきりしており、じつに良かった。またルイスは倒されてしまうとからっきしダメだった。ジョーダンの肘が何度かルイスの頭部顔面に落とされていたようにみえたが、ルイスはタフでケロッとしていた。ルイスはほんものの黒き野獣のようであった。

 二回にジョーダンが踏み込んで何をするかと思いきや、おもむろに上段横蹴りのような後ろまわし蹴りをくりだし、それがルイスの頬ゲタにまともにあたって、それで一気に勝負がついた。
 ショーン・ジョーダンのみごとな勝利であった。


Welterweight Brian Ebersole vs. Omari Akhmedov
 70戦ちかい戦績のエバーソウル、格闘好きだけどそれに見合うだけの運動能力がいまひとつという印象で、それを知力や作戦で補っているかんじ。しかし現代格闘のレベルには到底達しえないという印象であり、これは運動能力の高いアクメドフが問題なく勝つであろうとおもっていた。

 初回のアクメドフの蹴りを膝にうけて、試合放棄。
 初回の最後までそれを隠しとおしたのは大したものだ。

 アクメドフの強打が目だったが、相変わらずパンチが外からなのばかりで、あのままでは上位には通用しないだろう。


Lightweight Chris Wade vs. Christos Giagos
 ウェイドのレスリングのうまさが光ったが、ヒアゴの打撃もよく当たっていた。序盤は両者ともにきびきびとしたうごきをみせ見ごたえがあったが、両者とも決め手を欠いたまま疲れてしまい、試合の印象はパッとしないものになった


Middleweight Ricardo Abreu vs. Jake Collier
 コリアーはせっかくのリーチがあるのに、ハエが止まりそうなパンチしか出せない。あれでは上に来るのは難しいだろう。
 内容的にはアブレイの方が上手かったようにみえたが、判定はコリアーだった。


Bantamweight José Quiñonez vs. Leonardo Morales
 24歳と22歳の活きのいい選手同士によるみごたえある試合だった。

 

2015年6月1日月曜日

UFC Fight Night: Condit vs. Alves 感想

 旅行に行ってたためリアルタイムで観れなかったが、なかなか注目すべき若い選手が登場してきた興行であったようだ。

Welterweight Carlos Condit vs. Thiago Alves
 ウッドレイ戦で膝の靭帯を傷めてしまったコンディットの再起戦だが、左右の肘をつかった実にえげつない攻撃をみせてくれた。

 序盤のコンディットは距離を維持しつつリーチを生かした速いパンチと蹴りのコンボをよく出していた。が、アルヴェスのパンチがタイミングをよくとらえてコンディットの出鼻を制し、また重い蹴りもコンディットの膝によく当たり、アルヴェスが感触を得つつあるようにみえた。
 ところが初回中盤あたりからコンディットが奇妙な肘を出しはじめた。オーソドックスでおもむろに右から入りつつ、踏みこんで左肘、そして近距離から右フックもしくは肘で終えるというコンボなのだが、その左肘が、渾身の右とほとんど一緒に出るため、受ける側は防ぎようがない。その肘が二回中盤にアルヴェスの鼻柱をとらえ、それが致命傷となった。アルヴェスはその後もよく耐えて猛然と反撃を試みたが、3回開始前にドクターストップとなったてしまった。

 コンディットの踏みこんだ肘は左だけでなく、サウスポのスタンスからも同じように右肘を出したり、組むとみせかけて肘を突き出したりと、実に多彩でえげつなかった。ストレートパンチを直球とすれば、あの肘はまるでキレのいいスライダーのようで、受ける側としてみるとまったくどうしようもない。コンディットがふたたび上位陣にとっての脅威になるであろう。今後のウェルター級戦線が楽しみである。


Featherweight Charles Oliveira vs. Nik Lentz
 オリヴィエラが頻繁に出す膝がよく腹部に当たっていた。力の差がかなり歴然としていたにもかかわらず、明らかに試合を決めるべきところでも、すっぱりと勝負をつけようとせず、パウンドを途中で止めたりして、その後はなぶるように相手を傷めつけていた。このオリヴィエラという選手、実はかなりいやな男なのではないか。


Welterweight Alex Oliveira vs. K.J. Noons
 とても長いリーチを生かして遠くから切れ味のある打撃を当ててくるオリヴィエラのスタイルは、ちょっとアンデウソンをソウフツさせたが、やや雑で、正確さにおいてまだまだである、という印象。
 しかしリーチを生かした打撃で圧倒しつつも、最後はからめ捕るように裸絞めであったのは見事であった。


Welterweight Darren Till vs. Wendell Oliveira
 リバプール出身のティルは22歳のサウスポー、体が大きく、安定感があり相撲がつよく、骨太でちからがある。グランドでは相手に上体をあずけてしまうことなく、自身の下肢に体重を残したまま相手をいたぶることが出来、また実にえげつない肘が出せる。相当のポテンシャルを秘めた将来有望な選手である。


Featherweight Mirsad Bektic vs. Lucas Martins
 ベクティクという選手は24歳、これまたとほうもない選手である。エネルギーに満ちあふれたようなアグレッシブなうごきで、打撃でも組んでも実に力強いという印象。マーチンスといえば、エルキンス相手にかなりいい試合をした、鋭い打撃をもった選手である。それがべくティスにはまったく相手にならなかった。このベクティクという選手、上位を脅かす存在になるのは必至だろう。


Welterweight Tom Breese vs. Luiz Dutra
 イングランドのブリースは23歳、長身のサウスポーで、これもかなりのポテンシャルをもった選手だろう。