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2012年12月31日月曜日

Satoshi Ishii vs. Tim Sylvia in Inoki Bom-Ba-Ye

 日本の石井選手には,期待とため息の入り混じったふしぎな思いで注目している。

 この大晦日の石井慧選手の試合なぞ観るに,シルビアは練習など何もしていない,ただのデブだ。
 尻のすぼんだエックス脚で,こういう類のデブはアメリカによくいる。尻が根付いたかのようにカウチにどっかり座りこんでビール飲みながら毎日テレビなんか観呆けてるような体つきである。

 そんな相手と見世物的に対戦させられる石井慧,格闘デビューした頃は彫り込んだような肉体美であったのだが,今みるに体に締まりがなく,精細さに欠けた表情。とてもきびしい練習を積んできたようには見えない。

 そしてアナウンサーと解説者のワカッテなさっぷり。
 本当にワカッテナイのかどうか知らないが,テレビ放送なのでなんとか盛り上げなければならないのだろうけど, それにしても聴いていて不快になってくるような,そらぞらしい解説。

 レコード大賞で日本の音楽界の現状云々という話があったが,この試合を観てつくづく日本の格闘界の実情がよくわかったかんじである。

 

2012年12月30日日曜日

UFC 155: Dos Santos vs. Velasquez II

Heavyweight Junior dos Santos vs. Cain Velasquez
 一年を締めくくるにふさわしい,すばらしい試合であった。今回は予想的中で,多彩な攻めをみせたヴェラスケスがJDSを圧倒した。
 
 JDSを入念に研究した 上でそれを徹底的に実行したことがヴェラスケス・サイドの勝因だろう。強打で知られるJDSの大きなパンチを怖れず,序盤からジャブを出しつつ前へ前へと出て行ったこと,そして執拗なまでのテイクダウン・アテンプト。どんなに疲労してもガードが下がることはなく,いつも頭を振りながら入ってゆく。これらは練習の賜物だろう。一方のJDSは中盤以降ガードは下がりっぱなしで,足がそろって棒立ちな場面も何度かあった。そこらへんにも両者の勝敗の分かれ目が見えた。

 初回にヴェラスケスが放ったジャブがJDSの鼻柱に入り,その後に人中あたりにワンツーがまともに入った。さらにオーバーハンドの右のストレートがアゴにまともに当たり,これが試合の流れを決定づけた。そして何度も何度も繰り返されたテイクダウン・アテンプト。ヴェラスケスはレスリングの専門家である。当然いくつかは成功するわけで,それがJDSを疲弊させ,一貫してヴェラスケスのペースとなった。
  
 顔を大きく腫らしたJDSの敗因はパンチの振りが大きいことと,寝技からは逃げるしか出来ないことの二点であったろう。どんなに強打の選手でも,フックや アッパーなど大降りばかりでは勝てない。やはり本当につよい選手は,真っ直ぐがいいのである。これはボクシングや格闘にかぎらない。それでもJDSのパンチと裏肘は最後まで斬れがあり,何度かタイミングよく当たっていた。そのたびにヴェラスケスはテイクダ ウン・アテンプトもしくはクリンチすることで誤魔化しきった。これも練習の賜物であろう。メンタルが弱い選手だったら下がってしまったろうという場面は何度もあっ たが,ヴェラスケスはどんな場面でも絶対に下がることなく終始前へ前へと出ていた。

 選手だけでなくセコンドの違いも勝敗に大きく関与すると感じた。ヴェラスケスのセコンドの指示は,常にプレッシャーを与えろ,ジャブから入れ,など簡潔明快であったのに対し,JDSサイドのセコンドの指示は細やかなテクニカルな指示が多く,あれだけのダメージを負い疲労困憊な選手本人の耳に入っているかは疑問であった。
 

Lightweight Joe Lauzon vs. Jim Miller
 野蛮人と新人類の対戦のようであったが,これもファイトあふれる大流血戦となった。パンチと肘をよく当てていたジム・ミラーが判定で勝ったが,ロウザンも最後に足をとってあわやという場面があり,セミファイナルにふさわしい好試合であった。


Middleweight Tim Boetsch vs. Costa Philippou
  ティム・ボウチといえば岡見勇信から金星をあげた選手だが,さほど器用でない。今回もそのとおりの試合であった。はっきりいって,つまらない試合。残念ながらこれも予想どおりであった。


Middleweight Yushin Okami vs. Alan Belcher
 わりとまともにベルチャーのパンチをもらう場面があったのが気にはなったが,前回同様に岡見が相手を封じ込め相撲をとらせずに勝った感じであった。

 岡見の上手いのはわかるのだが,一体どういうふうに試合を終らせたいのかよくわからない。パウンドするでもなく肘を当てるでもなく単に柔道のおさえ込みを狙っているかのようで,何をもって勝利につなげようとしているのかいまひとつよくわからなかった。

 また岡見には,いまひとつ観客を湧かせる攻撃の斬れ味というか,見せ場が無いのも大きな欠点だろう。彼の試合は勝つための試合はこびというより,負けないための試合はこびであり,こういう試合ばかりする岡見に対し興行者側としてはまたタイトル挑戦権をぜひ与えたい,とは思わないのではなかろうか。


Middleweight Chris Leben vs. Derek Brunson
 これも実につまらない試合であった。

 明らかな体力差で序盤にダメージを与えたブランソンが判定で勝つには勝ったが,攻めのつめが甘く,また持久力が足りず,まるで練習不足のようであった。しかも,こんなつまらないダレた試合をしておいて,試合終了は勝利を確信して喜びの絶叫などしていた。頑張って勝てて嬉しいのはわかるけど,これはアマチュアでなくプロの試合である。観客に選手のガッツが伝わってこないような試合をやっているようでは,プロとして失格だろう。


Bantamweight Brad Pickett  vs. Eddie Wineland
 ブラッド・ピケットはマイク・タイソンのようなピーかブースタイルで踏み込んでくるが,ワインランドの方がよく相手が見えてるようで,アッパーがいいタイミングで入ってる。ただし,まるでボクシングの試合のようでもあり,総合格闘の試合としてはいまひとつであった。


Featherweight Leonard Garcia vs. Max Holloway
 ホラウェイは期待の若手21歳。ローリングソバットみたいな後ろまわし蹴りがよく相手のボディーに入るし,パンチもタイミングよくソリッドに入るのだが,やや非力である。
 判定が割れたが,ホラウェイが勝利した。

2012年12月24日月曜日

UFC 155: Dos Santos vs. Velasquez II 予想

Heavyweight Junior dos Santos vs. Cain Velasquez
 世界最強を決める一戦ともいえる,とても楽しみな試合。 前回はドス・サントスによる右の一発がヴェラスケスの側頭部に当たって試合を決めてしまったが,あのときはヴェラスケスは肩の手術後で明らかな練習不足であったようにみえた。肩が本調子でなければ得意のタックルも腰が引けてしまう。気持ちに迷いがあったように思えてならない。今回は違う。私はヴェラスケスが勝つだろうと思う。

 ヴェラスケスの強さは,反応の速さにあると思う。5月にアントニオ・シウバのローキックに対してすばやく反応して突破口を開いたし,ブロック・レスナー戦においてもパワーに押され倒され危ないと思わせる場面があったが,一挙動で立ち上がった。全身の運動能力の高さはヴェラスケスの大きな武器のひとつだろう。またヴェラスケスといえばカーディオ,つまり心肺機能の強さである。 5Rまでペースダウンすることなく闘える。そしてレスリング力である。全米ジュニアカレッジのチャンピオン であり,全米学生ランキングでもトップ5の実力である。グラウンドでパウンドやエルボーを当てるのが上手い。JDSを寝かせることが出来れば,ヴェラスケスががぜん有利になるにちがいない。

 JDS の最大の武器は高いボクシング技術とその破壊力だろう。グラウンド技術はよくわからない。最近ブラジリアン柔術で黒帯を獲得したらしいが,それが試合に生かせるかどうか。中途半端にグラウンドに自信をもつと,それがかえって付け入られる隙になる場合もある。心肺機能がどれだけ優れているかもまた未知数でもある。JDSがテイクダウン防御が上手いことだけは確かであるが,これもヴェラスケスのような一流レスラー相手にどこまで通用するか見物である。

 おそらくヴェラスケスは打撃戦に応じるとみせてテイクダウンをとりに来るであろうし,JDSは相手が出てくれば迎え撃つように前に出て強力なパンチ,とくにアッパーをあわせてくるのではないか。

  当たり前すぎる予想だがそこでパンチが当たればJDS,テイクダウンが決まればヴェラスケスが勝つのではないかと思う。
  また,打撃戦になった場合,大きなパンチを振ってくるJDSに対し,ヴェラスケスが下がればJDSが勝つであろうし,下がらずに中から速い真っ直ぐを出して迎い撃つことが出来ればヴェラスケスが勝つのではなかろうか。


Lightweight Joe Lauzon vs. Jim Miller
 寝業師ジム・ミラーと,打撃もあるジョー・ラウゾンの対決。どちらが勝つか予想がつかないが,ラウゾンの試合は大概面白いので,格闘見物を楽しもう。



Middleweight Tim Boetsch vs. Costa Philippou
  ティム・ボウチといえば岡見勇信から金星をあげた試合が記憶にある。岡見に完全に見切られレッスンつけられてるような試合であったが,終盤のワンチャンスをものにして強引にパンチを連続して当てて大逆転した。勝負強い選手であるが,技術的にはさほど特筆するものはもっていないようにみえた。

 一方のフィリポーは福田力選手に判定で勝っている。

 ボウチが破壊力のあるパンチを当ててくれれば面白いが,よくかみ合わなかったりすると案外つまらない試合になるのではないか。



Middleweight Yushin Okami vs. Alan Belcher
 岡見勇信といえば最近の日本人格闘家の中でいちばんUFC王座に近かった選手である。速いジャブもよし,相撲も強しで,安定感のある戦い方をする,安心して観ていられる選手の一人である。ただし,前々回の試合で頭部にかなりの強打を連続して浴びた点,そして前の試合でもわりと相手のパンチをまともにもらっていた点が気になる。だいぶ目が悪くなっているのではなかろうか。

 かたやアラン・ベルチャーといえば秋山成勲選手のUFCデビュー戦で大いに接戦をした選手である。撃ってよし,寝技もよしの,これもバランスのとれた選手。秋山に惜しくも敗れて以降ますます安定感を増した感じがする。これはいい試合になるにちがいない。
 
 私はベルチャーの打撃がよく当たって判定,もしくはパウンドによるTKOで勝利するのではないかと思う。



Middleweight Chris Leben vs. Derek Brunson
 ケンカ屋クリス・リーベンの登場である。相手のブランソンがどういう選手か私はよく知らないが,ストライクフォースで二敗した後,UFCに参戦してくるようだ。

 数々の名勝負をしてきたクリス・リーベン,今回も面白い試合にしてくれると期待している。

2012年12月16日日曜日

The Ultimate Fighter: Team Carwin vs. Team Nelson Finale

Heavyweight Roy Nelson vs. Matt Mitrione
 どちらもケンカ屋キンボ・スライスをノックアウトで倒してる打撃主体の選手。これは壮絶な試合になりそうである。豆タンクなビッグ・カントリーの方が人気 があるが,私はリーチのあるサウスポーのミトリオーネが勝つだろうというセオリーどおりの予想。

  しかし,ふたを開けてみれば,ビッグ・カントリーによる豪快なノックアウトであった。試合後のスローで観るに,ネルソンのアッパーは単発でなくコンボのつもりだったらしい。
  ミトリオーネの渾身の左にあわせて,右のアッパカットをくり出すネルソン,闘牛みたいに相手が出てくれば自分も出ていって当たり前のように相打ちを狙ってゆく。どっちかが当たってどっちかが倒れるという試合であった。
  
 ビッグ・カントリーのロイ・ネルソンは打撃主体の選手と書いたが,意外にももともとは柔術の専門家なのだそうである。ブラジリアン柔術は黒帯で,それからロイ・カン・ドーとかいうよくわからない格闘技の八段だそうな。2009年からパンチを本格的に習い始めて,それがしっくりきて,すっかり自分のものにしたらしい。
 パンチというのはいくら練習してもダメな選手もいれば,すんなりと覚えてしまう選手もいて,どうやら天分によるものが大きいようだ。


Welterweight Colton Smith vs Mike Ricci
  25歳のコールトン・スミスは兵隊で二児の父とのこと。海兵隊の宣伝そのまんまなかんじの選手。私は職業軍人などよりもリーチで上まわる26歳の職業格闘家マイク・リッシの方が勝つだろうと予想。

 ところが予想に反して職業軍人が職業格闘家を圧倒した。スミスの判定勝ちであった。
 軍人スミスの方がはるかに殺気を感じる闘い方をしていた。技術云々というより,すごい活力というか,朝鮮人参でも食ってきたかのようなエネルギーである。やはり命のやりとりをしたことある人間は一味違う。
 ミッチはセオリーどおりの格闘技をしようとしてるのに対し,軍人スミスはがむしゃらなケンカファイトで出来ることをとにかくやる,というエネルギッシュな闘い方であった。

Heavyweight Pat Barry vs. Shane del Rosario
 元キックボクサー同士のヘビー級の対戦だがパット・バリーによる,ヘビー級らしい荒っぽいパンチで相手の顔が完全にのけぞるようなノックアウト勝ちであった。

 両者相撲っとりみたいな体型だが,ふたりとも相撲は下手であり,試合としてはいまひとつ見どころのあまり無い試合であった。


Featherweight Dustin Poirier vs. Jonathan Brookins
 押しつ押されつの壮絶な打撃戦であったが,最後はポイエーがダース・チョークで極めた。


Preliminary Card
Welterweight Mike Pyle vs. James Head
 37歳でまだ闘うマイク・パイル。最後は膝を入れて大逆転して勝ったけど,序盤は相手の速いパンチをまともに顔面にもらって危なかった。やはり歳とってまず衰えるのは動体視力と,速い打撃に対する防御反射のようだ。


Bantamweight Johnny Bedford vs. Marcos Vinicius 
 ヴィニシアスはブラジル柔術の黒帯だそうで,それだけで強そうな先入観を持ってしまう。
 しかし,なんとも華奢げな外見のヒゲをたくわえた白人ベッドフォードが 実に鋭いパンチを出して圧倒した。これだから格闘は面白い。


Lightweight Rustam Khabilov vs. Vinc Pichel
 ロシアのカービロフはコンバット・サンボの達人だそうな。ジャーマン・スープレクスを三発も放って,相手を完全にグロッキー状態にしていた。
 カービロフはなかなかするどいリードブロウを放つ。相撲も強い,26歳。これは面白い選手。ベン・ヘンダーソンに新しい脅威か。


Bantamweight Hugo Viana vs. Reuben Duran
 ヴィエナはスタンスの広い独特な構えから,ストレートともフックとも言いがたい左右のハンマーパンチを強引に振り回してくる。今回は見事にノックアウトしたが,もうすこしコンパクトな真っ直ぐをおぼえないと上にあがってくれば大振りにカウンターを合わせられてしまうのではないかな。

 

2012年12月9日日曜日

Manny Pacquiao vs. Juan Manuel Marquez あのパッキャオが失神負けを喫す


 これが四度目の対戦となる,フィリピンの,いやアジアの英雄マニー・パッキャオと,彼の最大のライバルであるメキシコのフアン・マヌエル・マルケスの試合。
 UFCの試合が終った後で始まったわけだが,UFCでブルース・バッファーのアナウンスを聞いた後で,ボクシングでマイケル・バッファーのアナウンスを聞くという,実に充実した一日となった。ミット・ロムニー氏も観客席で観戦だったそうだ。
  
 総合格闘以上に壮絶な結末の試合となった。
 1R,2Rともにパッキャオが攻勢であり,マルケスは年齢による衰えを感じさせた。
 ところが,3Rにマルケスの右がわりとまともにパッキャオの頬をとらえ,パッキャオはダウン。
 すぐ起き上がったものの,そこから形勢が逆転した感じがした。マルケスは自信をもってぐいぐいと前に出るようになり,試合の流れが明らかに変わった。

 ところが,5R,こんどはパッキャオの左がマルケスの出鼻に当たり,マルケスはバランスを崩してダウンとなった。
 これでいよいよ面白い試合になったぞと,そう思った矢先であったか。
 コーナー付近で両者が激しく相打ちのようになったときに,マルケスの右がパッキャオの人中にまともに入った。パッキャオは前のめりに倒れ,失神。
 まったく衝撃的な結末であった。
 
 序盤は明らかにパッキャオが優勢だと思ってたのだが,3Rのマルケスの一発で明らかに形勢が逆転して,マルケスが優位にたった。パッキャオも決してスピードが落ちたわけでもないのだけど,マルケスからは自信満々な雰囲気が出てくるようになった。
 人間の精神の優位性というのはふしぎなものである。

 試合そのものはすばらしく観ていてとても楽しかった。
 ただ,ちょっと残念なのは,この試合で失神ノックアウト負け方をしてしまったことでマニー・パッキャオ選手の試合の商品価値が下がったであろうことである。
 ああいう負け方をしてしまうようだと,まずメイウェザーには絶対に勝てないんじゃないか,というのが感じが強くしてしまうし,連勝が止まったばかりでなく二連敗してしまったパッキャオと,まだ無敗のメイウェザーとが闘う意義もあまり見出せなくなってしまった。

 しかしマニー・パッキャオはまだまだ闘うそうである。
 やはり拳キチだね。


 

2012年12月8日土曜日

UFC on Fox: Henderson vs. Diaz

Lightweight Benson Henderson (c) vs. Nate Diaz
 下半身が安定し上体が柔らかく蹴りを多用してくるヘンダーソンを相手に,ディアズがどれだけ距離をつめてパンチを当てられるのかが見どころであったが,やはり予想どおりヘンダーソンを攻略することは出来なかった。体格差がかなりあったにもかかわらず,小さなベンヘンが大きなネイトをまったく寄せつけずに圧倒した形となった。

  ベンソンはエドガー戦でも見せた様に序盤から強烈なローキックでもって攻めこんだ。腰高なネイトに対して下半身への攻めはとても有効で,組み合ったときの安定感に大きな差が出た。ときおり相手の腿を狙ってパンチを当てるシーンまであったが,これが意外にも相手のバランスを崩すのにとても有効であった。

 何度かネイトがベンソンの足を取った場面もあったが,まるでチラノサウルスのようなベンソンの足は極めるのが物理的に困難なようで,ベンソンもあわてることもなく脱出していた。また,ベンソンの足が前後に開脚してまるで相撲の股割りのような体勢になった場面もあったが,テコンドーの選手らしく股関節が柔らかいベンソンは平然としていた。

 チャンピオンらしく観客の視線も意識して強引なラフ・ファイトも見せたりして,だいぶ余裕すら感じられた。ベンソンの安定した闘いぶりを見るに,ライト級で長期政権を築くことになりそうなかんじである。



Light Heavyweight Maurício Rua vs. Alexander Gustafsson
 これも予想どおりガスタフソンが圧倒したが,思いのほか斬れ味に欠けたのが残念であった。
 とくに今日は彼の攻撃力よりも,むしろ意外にタフで打たれ強いことの方が目立った試合であった。何度かショーグンのいいパンチ,とくにオーバーハンドの大きな右をまともにもらっていた場面があったが,ガスタフソンはわりとケロッとして何事もなかったかのように攻勢に転じていた。あのオーバーハンドの右でもってリョート・マチダを倒したショーグンとしては,少なからぬ衝撃だったのではなかろうか。

  ショーグンは今回もあまりよくなかった。試合ごとに悪くなっていっているような感じさえする。UFCライトヘビーの王座を獲得した頃は,リョートのカウンターにも実に敏感に反応していたのだけど,今回も,前回の試合でも,自分のおもうように体が動かないようなかんじで相手のパンチをまともに顔面で受け止める場面が数多くみられた。あれだけガスタフソンの打撃をもらってしまうショーグン,今後もどんどん下降してゆくのではなかろうか。心配である。
  

Welterweight B.J. Penn vs. Rory MacDonald
 UFCの古豪が若い選手相手にどう闘うか見物であったが,やはり予想どおりマクドナルドが圧倒した。

 マクドナルド選手は左のリードブローがよく伸びるし,距離が近ければそれが肘となり,ボディーへのアッパーとなる。ボディーブローがミドルキックとあわせてとても有効で,BJは何度か動きが止まるシーンがあった。ただし,彼がときどき出していたまわし蹴りはあまり良いものでなく,もっと反応の良い相手であったらあの蹴りがつけ入られる隙になったかもしれない。

 BJはとても軽量級とは思えない弛んだ腹をしており,きびしい練習メニューを消化してきたトップクラスの選手とはとても思えなかった。UFCのトップ選手としては明らかに下降線の途上であり,この試合で引退してもよいくらいであった。

 予想どおりのマクドナルドの圧勝だったが,惜しむらくはノックアウトできなかったことだろう。
 しかしマクドナルドの安定感と慎重さは特筆すべきものであり,もしかしたらGSPにとってヘンドリックスよりも大きな脅威になるかもしれない。しかしながらマクドナルドはGSPと仲良しであり,彼のことを深く尊敬しているそうで,マクドナルドがGSPと対戦することはなさそうである



Welterweight Mike Swick vs. Matt Brown
 スウィックの前回のKO劇が印象的だったしブラウンの戦績もさほどパッとしないことから,今回も豪華なノックアウトが見れるかと思っていたが,ブラウンが左フック右ストレートのワンツーをタイミングよく当てノックアウトした。



Preliminary Card (FX)
Lightweight Yves Edwards vs. Jeremy Stephens
 26歳のジャーミー・スティーブンスはKO率の高い打撃の選手。まるでマサカリでも振り回すようにして大きな右のハンマーパンチを放ってくる。風切り音かここまで聞こえてきそうである。一方,今回が61戦目の大ベテラン,サウスポーのエドワーズがスティーブンスの打撃をどう誤魔化すかが見物だろう。

 と思っていたら,エドワーズがうまくカウンターを当て,あっさりノックアウトした。スティーブンスのような荒削りな打撃主体の選手は,弱い相手には滅法強いけれども,そこそこ経験を積んだ選手が相手だといくらでもつけ入る隙があるということか。


Bantamweight Raphael Assunção vs. Mike Easton
 ブラジリアン柔術とテコンドーで黒帯のマイク・イーストンは全身にバネと力のある選手だけど,あんまり器用でないかんじである。ただしテイクダウン防御はなかなかのものであった。テコンドーの達人というのは概して下半身が安定していてバランスがいい。

 一方のアサンサオはスタンスを頻繁にスイッチして,相手の出鼻にあわせるように当てるのが上手い選手であった。判定でアサンサオが勝った。



Lightweight Ramsey Nijem vs. Joe Proctor
 24歳のニジェムが判定勝ちであったが,若い選手らしく荒削りで豪快な打撃をおもいきって放ってくる,なかなか見ていて面白い選手であった

 

2012年12月3日月曜日

UFC on Fox: Henderson vs. Diaz 予想

Lightweight Benson Henderson (c) vs. Nate Diaz
 サウスポー同士の対戦。カリフォルニアの辰吉丈一郎ことネイト・ディアズがチャンピオンのベンヘンに挑戦する。
 接近して強引に相打ちを狙ってくるスタイルはディアズ兄弟ならではであるが,ベンソンは下半身がしっかりしておりバランスもよく足も速く上体も柔らかい,なかなか距離をつめるのが難しい選手。やや単調な攻めに陥りやすいネイトに攻略が出来るだろうか。
 私はベンソン・ヘンダーソン選手が危なげなく判定で勝つだろうとおもう。


Light Heavyweight Maurício Rua vs. Alexander Gustafsson
 PRIDE時代からの実力派ショーグンと,新進気鋭の若い北欧の選手の対戦。
 ショーグンはジョン・ジョーンズとダン・ヘンダーソンとの対戦でかなり頭部にダメージを負ってきたことが気になる。どうもこのごろは反応が鈍くなってきているようにも見受けられる。 とくに前回のブランドン・ヴェラ戦では油断もあっただろうけれど,どうでもいいようなフックをまともにもらってピンチに陥っていた場面があった。
 若くて上昇気運のガスタフソン相手ではヴェラのようにはいかないだろう。ショーグンは私のいちばんのお気に入り選手でもあり,ぜひとも応援するつもりだが,若いガスタフソンが古豪を圧倒してジョン・ジョーンズを脅かす存在になってほしい気もする。
 というわけで私はガスタフソン予想。
 

Welterweight B.J. Penn vs. Rory MacDonald
  カナダはブリティッシュ・コロンビアの23歳ロリー・マクドナルドに期待している。打撃にしても極め技にしても次から次へと技が出てくる選手であり,上手さとがむしゃらさを兼ねそなえた,いかにもケンカのつよそうな選手である。確実に上位定着が予想される。
 マクドナルドがBJをノックアウトで倒すのではなかろうか。

 

2012年11月18日日曜日

UFC 154: St-Pierre vs. Condit

Welterweight Georges St-Pierre vs. Carlos Condit
<試合前予想>
  全盛期のGSPならば明らかに有利だけど,現在のGSPには不明な点が多いし,不安要素を挙げればいくつもある。まず,左目の視力がどの程度回復している のか。眼球内で出血したとかしないとか,くわしくは知らないのだが,飛蚊症のような症状が残ればそれはそれは大きなハンデだろう。膝を蹴られまいとして動 きにも偏りが出るのではないか。脚力がどの程度回復しているのか。
 一方のコンディットはあのニック・ディアズを誤魔化しきった試合巧者であり,技巧派のキム・ドンヒュンを文句無しにノックアウトしている。 私はコンディット有利だと思う。

<試合後感想>
 GSPはつよかった!
 気合の入りまくったコンディットとくらべて,GSPは入場時はかなりナーバスな表情をしており,これは・・・と不安を感じた。 が,リングに上がったときは,いつものGSPの表情に変わっていた。

  GSP の強みは将棋みたいに持ち駒の多彩さで,どっちが飛んでくるかわからないオフェンス力。先手先手といけば好感だろうと思っていたが,そのとおりの展開になった。
 強気にどんどん前に 出てゆくGSPにコンディットは終始押され気味であった。GSPの見事なテイクダウンもほとんど全て決まっていたし,GSPが圧倒的な実力差を見せ付けたかたちとなった。
 3Rであったか,コンディットが低い体勢から伸び上がりざまにみせた左のまわし蹴りがGSPの側頭部をとらえ,あわやという場面があった。それでもGSPが後半盛り返して,そのラウンドもほぼイーブンにしていた。
 コンディットも暫定王者らしく実によく頑張り,GSPの右側頭部にタンコブ,左目の下と鼻柱を割って,両者血みどろの死闘は最終ラウンドまで続いた。
 ショーグン対ヘンドの試合に匹敵する好試合であった。

  懸念していたGSPの左目だが,とくに問題は無さそうでもあったが,コンディットの右を序盤からポンポンもらってたのがやや気になるところでもある。 次回も注視したい。
 右足はほぼ常に後ろ足だったのも,やや気にはなった。ときおりスイッチして右足を前に出すこともあったが,すぐオーソドックスにもどしていた。スーパーマン・パンチも力のこもったのは一発のみだったかと思う。

 次回はジョニー・ヘンドリックスかアンデウソン・シウバであろう。 ヘンドリックスであれば勝機は十分にあるであろうが,コンディットでいくつか危うい場面があったことを考えると,やはりアンデウソンにはGSPはさすがに勝てないとおもう。


Welterweight Martin Kampmann vs. Johny Hendricks
<試合前予想>
 これもたのしみな一戦。 上り調子の陽気なヒゲ男,ジョニー・ヘンドリックスが勝てば面白いのだが,ケンプマンも試合巧者である。わからない。 ヘンドリックスの左が当たればヘンドリックス,判定ならケンプマンか。

<試合後感想>
 これは予想どおり,ヘンドリックスの左のストレート一発であった。
 往年のマイク・タイソンを思わせるような鋭い踏み込みで,距離をとりたいケンプマンが下がろうとしたところに,右フック,左の真っ直ぐのワンツー。左がアゴに見事に入り,ケンプマンは直立したまま後ろに倒れた。すごい一発であった。

 試合前の場外チェックで,ヘンドリクスは自分で鼻の穴のなかに小指でワセリンを塗付していた。ああすると呼吸がしやすくなるのであろうか。


Middleweight Francis Carmont vs. Tom Lawlor 
 割れた判定でカーモントが勝ったが,これもなかなか競った好試合であった。
 ローラーは妙な仮装をして入場してきたが,そういう面白みのある選手らしい。何度かギロチンを極めかかったが,カーモントがよくしのいだ。



Light weight Rafael dos Anjos vs. Mark Bocek
 うなじに「福」の刺青のドス・アニョスは,アグレッシブに頭と手を動かしながら打撃から入ってくる選手で,膝とアッパーカットがとてもいい。また下半身がとても安定している選手で,まるでチラノサウルスのような力強い足をしている。テイクダウン防御も第一等であり,もちろん相撲もつよい。これは上位へ確実に登ってくる選手だろう。ブラジリアンらしい陽気さはドスサントスと似てる。ボチェックも柔術黒帯だが完全に運動能力とパワーで圧倒されていた。


Featherweight Pablo Garza vs. Mark Hominick
 アメリカの力石徹,『案山子 (Scarecrow) 』 のパブロ・ガーザはいい膝をもっているが,それをベテランのホミニクがどう対処するかがみどころの試合であった。
 大流血の試合となったが,肘を有効につかったガーザが勝利。うれし泣きをしていた。


Light Heavyweight Cyrille Diabaté vs. Chad Griggs
  とてもKO率の高いグリグスに対し,手足の長い39歳ストライカーのディアバテがどう賢く闘うかがみどころであった。デァビテのタイミングよく出した左がグリッグスの鼻っぱしらに入って効いた。最後は裸絞めで一本。
 これまでの軽量級とくらべると重量級の前座はなんだか雑で荒っぽく感じられたが,しかし,一発でもあたれば終るという緊張感があってこその総合格闘技であるからして,なかなか面白い試合だった。


Lightweight John Makdessi vs. Sam Stout
 松濤館空手の黒帯のマクデッシはデビューから連続KOだった強打の選手。彼の一発が当たれば面白い。一方,とくに破壊力の無いスタウトに勝機があるとしたら,寝技にもちこんで塩漬けの試合にすることだろう。

 序盤から打撃技術の高いマクデッシがボクシングのレッスンつけてるような感じになった。スタウトのうごきも完全に見切った感じで,巧みに頭を動かしてかわす。しかし一発を狙ってるかのようなマクデッシに対して,スタウトは休まずしぶとく攻める。マクデッシもちょこちょことパンチをもらうようになった。
 マクデッシはあれだけ技術差がありながらポンポン当てるだけで,ノックアウトできずに判定なんてやってるようではスター選手にはなれないだろう。


Featherweight Antonio Carvalho vs Rodrigo Damm
  アンデウソン・シウバがセコンドについたホドリゴ・ダム。かたや変幻自在の多彩なけりを出すカルヴァルホは判定で日本の日沖選手に勝ったことがあるという,松濤館黒帯の空手家。
 試合はダムが見切ったかんじで,序盤からどんどん間合いをつめていくが,カルヴァロのローキックがよく当たってたのを審判は採って判定でカルヴァルホ。


Preliminary Card
Welterweight Matthew Riddle vs. John Maguire

 リドルはレスリングで得た奨学金で学生レスリングをしてたが,レスリングコーチ が解雇されたせいで奨学金が切れ大学中退。それでプロ格闘始めたそうな。マイナー団体を経ずにいきなりUFCで試合をしている。 前回,クリス・クレメンツ Chris Clements に対してスタンディング・アームバーという奇抜な技でみごとに勝ったのだが,試合後にマリファナ陽性が出て無効試合にされたという。

 リドルはいつかのクリス・ワイドマンのようにえげつなく肘で相打ちを狙ったりするが,もっとリーチを生かして小さく真直ぐを出せばいいのに,とおもう。力をこめてぶんぶん振り回してるが,あまり当たらない。もっと踏み込んで撃てるようになれないと上へは行けないだろう。一方,リーチの短いマグワイヤの踏み込んだストレートの方がよく当たっていた。マグワイヤはもっと絞って下の階級に行くべきだろう。


Bantamweight Ivan Menjivar vs. Azamat Gashimov
 エルサルバドル出身のカナダ人メンジヴァーと,ロシアのガシモフ。UFC 初参戦のガシモフは11戦10勝で,サンボの達人だそうな,これは興味深い選手なので注目した。
 ガシモフは静かな選手かとおもいきや,意外と頭を振って積極的に動きまわる選手。かと思いきややはりサンボの選手らしく,つかまえるタイミングを狙っている。怪力であり,腕ひしぎされかかったのを強引に切ったりと荒っぽさもみせる。これは天才が現れたかなと思った矢先,メンジヴァーが腕をとって一瞬で試合を決めた。私は22歳のガシモフが天才らしく最後まで圧倒するかとおもっていたが, 「今日はホイス・グレイシーのように勝つ」 と虎視眈々とチャンスを狙っていたというメンジヴァーが見事に一瞬の隙をついて逆十字で極めた。ガシモフの腕は負傷したであろう。


Featherweight Darren Elkins vs. Steven Siler
 泥試合化してきたが28歳のエルキンスがいい頑張りを見せる。3Rからしか観ていないが,いいタイミングで右のクロスも入れてた。やはり判定でエルキンスであった。


2012年11月13日火曜日

UFC 154: St-Pierre vs. Condit 予想

Welterweight Georges St-Pierre vs. Carlos Condit
 何といっても待ちわびたGSPの復帰戦である。ファンのひいき心もあってか大方の予想はGSPとある。
 しかし私はべつにヘソを曲げているわけでなく大真面目に,コンディットが勝つのではないかと思う。

 全盛期のGSPならば明らかに有利だけど,現在のGSPには不明な点が多いし,不安要素を挙げればいくつもある。まず,左目の視力がどの程度回復しているのか。眼球内で出血したとかしないとか,くわしくは知らないのだが,飛蚊症のような症状が残ればそれはそれは大きなハンデだろう。膝を蹴られまいとして動きにも偏りが出るのではないか。脚力がどの程度回復しているのか。
 今回ははあまりに不確定要素が多いのだ。

 一方のコンディットはあのニック・ディアズを誤魔化しきった試合巧者であり,技巧派のキム・ドンヒュンを文句無しにノックアウトしている。

 私はコンディット有利だと思う。


Welterweight Martin Kampmann vs. Johny Hendricks
 これもたのしみな一戦。 上り調子の陽気なヒゲ男,ジョニー・ヘンドリックスが勝てば面白いのだが,ケンプマンも試合巧者である。わからない。

 ヘンドリックスの左が当たればヘンドリックス,判定ならケンプマンか。


Middleweight Nick Ring vs. Constantinos "Costa" Philippou
 両選手ともに福田力選手に判定で勝っている。かなり怪しい判定だったニック・リングに対し,フィリポーは福田力に対して明確に力の差を見せて判定勝ちしている。
 福田力を基準に比較すればフィリポー有利かもしれない。

 ニック・リングは,私の第二の故郷カルガリー出身であり,私は個人的に応援している。 ただし彼はパンチ力に欠けるのとガラスのアゴである点からすると,やはりフィリポー有利か。

 

2012年11月10日土曜日

UFC on Fuel TV: Franklin vs. Le (UFC: Macao)

Middleweight Cung Le vs  Rich Franklin 
 <試合前予想>
 リッチ・フランクリンは, 「カン・リーのうごきのパターン認識に意識を集中して戦う」 と語っていた。なかなか神経科学的にまっとうなコメントであり,この一言からもフランクリンがどれだけカン・リー対策を練り研究してきたかがうかがえた。カン・リーの試合は面白い試合になるのはまず間違いないのだが,これでますます面白そうになった。
 リッチ・フランクリンのニックネームは 『エース』。ジム・キャリーに似てることから,彼の映画の登場人物 『エース・ヴェンチュラ』 からとったもの。

 <試合感想>
 序盤はフランクリンがとてもいい感じであった。カン・リーのうごきをよく研究して練習してきたのがわかる。
 フランクリンが左のミドル・キックを放つと,カン・リーは踏み込んで腰で蹴りを受けた。フランクリンが蹴りとのコンボで大きな右を放とうとする矢先に,カン・リーの右フックが一閃した。それが見事にアゴをとらえ,フランクリンは一発失神KO。こういう芸術的なノックアウトが見たくて格闘観戦しているのである。すばらしい一撃だった。
 試合後にカン・リーはラッキーパンチと謙遜していたが,そうじゃないでしょう,しっかり腰が前に出て全身が一体になって,渾身の右腕であった。

  解説のドミニク・クルーズ氏いわく,足技を出すときはつねに "take your head off the center line" が鉄則と。 カウンターでやられないためには頭を体軸線上からつねにズラすこと。今日のフランクリンの一発負けは,まさにその鉄則を怠ったからだと語っていた。


Light Heavyweight Thiago Silva vs Stanislav Nedkov 
 <試合前予想>
 全勝中で上昇気運な強打のネドコフが,ライトヘビーの上位の一人であるチアゴ・シウバと対戦。シウバはリョート町田と対戦するまでは全勝街道だった実力派だし,ネドコフの実力を測る上でも格好の試合である。これは注目すべき試合であるとみた。


 <試合感想>
  予想どおり両者が序盤から振り回してきて,イッパツでも当たれば・・・ という試合であったが,強打のネドコフに対して巧者のシウバは相手の打撃をを誤魔化しきって,長期戦に持ち込んだ。
 ネドコフは心肺スタミナに問題があるようで,何度かパンチでダウンを奪いつつも徐々にペースダウン。やはりシウバの方がケンカ慣れしてた感じであった。徐々に徐々に自分のペースにもってゆき,最後は肩固めで極めた。
 シウバが安定した強さをみせた試合となった。


Welterweight Dong Hyun Kim vs Paulo Thiago
 <試合前予想>
 実力的にはキム・ドンヒュンが有利と思えたが,前回の肋骨負傷によるTKO負けから精神的にどのていど後遺症があったのか懸念していた。

 <試合感想>
 キムの上手さが目立った試合だった。まるでキムがシアゴにレッスンをつけてるような,まったく寄せつけない強さを見せつけた。
 キムは細身長身ながら下半身がおそろしく安定していて,組み合いになってもめったに倒れない。柔道家というのは相撲が強い。

  キムの試合を観ていて,キムをノックアウトしたコンディットの強さというものを実感した。復帰戦でコンディットと対戦するGSPはかなり危ういと思う。


Lightweight Takanori Gomi vs Mac Danzig
 <試合前予想>
 UFCも常連の五味選手,今回の相手は戦績でも実力でもさほど問題にならない選手であり,絶対に勝たなくてはならない試合であったろう。それも五味選手の持ち味である爽快な打撃によるイッパツ勝利が期待された試合だった。
  相手のダンジグ選手は,熱烈な動物愛護主義者だかで,ベジタリアンだそうな。格闘家でもゲイもいれば,ベジタリアンがいてもおかしくない

 <試合感想>
 デイナ・ホワイト氏によるファイト・オブ・ザ・ナイトにこの試合が選出された。
 緊迫する試合ではあったのかもしれないが,この程度の相手に? という観がぬぐえず,私にとっては印象の薄い試合であった。五味選手の試合内容は決して良いものではなかったと思う。

 むしろ水垣選手の試合,あるいは張鉄泉の試合をベスト試合として選出すべきではなかったか。


Lightweight Jon Tuck vs Tiequan Zhang
 <試合前予想>
 まるで少林寺から出てきたかのような張鉄泉は珍しい中国の選手だが,残念ながら相手が悪い。グアム出身のタックはプロフェッショナル柔術の世界チャンピオンで,6戦全勝,28歳。柔軟性のなさそうで老いた(34歳)中国選手がタックに翻弄されるだろうと思った。

 <試合感想>
 グアムのプロ柔術家より,最後まで根性を見せた張鉄泉の方が好感がもてた。負けん気も強く,撃ち合いにも応じ,足を止めて力のある左右のフックをくり出してくる。いい選手であった。尻すぼみだったタックよりも張鉄泉の次の試合が観たいと感じた。
 張鉄泉という選手,私は好きである。
 
 
Bantamweight Takeya Mizugaki vs Jeff Hougland
 <試合前予想>
 水垣選手もいつのまにかUFC暦がずいぶん長くなったね。交互に勝ったり負けたりしてきたが,その順番に従えば今日は勝つ日だね。日本人が5人登場なんて,まるで埼玉でやってるみたいだ

 <試合感想>
 水垣選手の安定した強さが際立った試合であった。もはや安心して観ていられる。もともとガッツのある選手だが,ラフファイトも随所に披露して観客を沸かせていた。ユライヤ・フェーバーと初対戦したときは相手の派手さに完全に押され隠れてしまった感じだったが,今やUFC軽量級を代表する選手になりつつあるようだ。
 帰りの花道で涙を流す水垣選手の姿が印象的であった。


Preliminary Card
Bantamweight Alex Caceres vs Motonobu Tezuka
 <試合前予想>
 アレックス・カセレスの愛称の Bruce Leeroy というのは 『くろんぼブルース・リー』 というようなニュアンスか。まだ23歳。手足が長い,米国人。 なかなか独創性のある選手なのだが,タフネスさにやや欠ける。 ジークンドーをやってたらしくどきどきブルース・リーのようなカンフーのポーズを見せたりする。打撃だけでなく寝技も結構いやらしい。弱点は骨細くてタフネスさに欠けるほかに,ややバランスの悪さが目立つ。腰が高い点か。
 手塚選手に関しては何も知らなかったが,木数珠を首からさげ,変なマスクをかぶり,なかなか不敵な面構え。チャック・リデルのようなヘアスタイル。カメラにもガンつける。こういう選手は私は好きである。できれば手塚選手に勝って欲しい。この男の次が観たい,とおもった。

 <試合感想>
 手塚選手の,まるですっぽんのような執拗さには好感がもてたが,やはり速い打撃への対応がいまひとつであった。グラウンドで手塚選手に有利な展開な場面がいくつかあったが,あそこで絞め技関節技ばかり狙うのでなく,肘打ちやパウンドのチャンスを生かせるようになればもっといやらしい強くなるだろう。

 いまいち二流な選手というのは,テイクダウンを狙って組みに行っても,その先の目的というか頭の中のイメージがひとつふたつぐらいしか無く,攻めの流れのなかで技の選択枝が派生していかないように感じる。だからどこかの段階で相手に対処されてしまうと,それだけでもう先に進めなくなる。
 手塚選手を観ていてそう感じた。


Flyweight John Lineker vs Yasuhiro Urushitani
 <試合前予想>
 ベテランの漆谷選手はブラジル人相手には強く全部勝ってる。しかし中途半端な蹴りが目立つ選手で,強打の22歳リネカーに通用するかどうかは疑問だった。

 <試合観想>
 やはり漆谷のバランスの悪さが目立つ試合であった。カウンターはタイミングよく相手を脅かすものであったが,下半身がふわふわしていて,いまひとつどの打撃にも力が入らない。とくに自分から出向く打撃は力がなく相手に何の脅威も与えていなかった。やたらぴょんぴょん飛びはねてばかりいる選手だと思って観ていたが,リネカーの左ボディーがミゾオチに当たって以降は明らかに足が鈍った。
  3R以降,リネカーは突如右を出し始め,これがまたよく当たった。判定であったが,漆谷は完敗である。


Middleweight Riki Fukuda vs Tom DeBlass
 <試合観想> 
 この試合の終盤から観始めたのだが,福田がいい感じで試合を進めてきたことがうかがえた。あそこまで一方的ならだらだら判定勝ちなど狙わず,倒して存在をアピールしてほしかった。

2012年10月12日金曜日

UFC 153: Silva vs. Bonnar 部分予想

Anderson Silva vs Stephan Bonnar
 達人アンデウソン・シウバと,さほどに切れ味の感じられないステファン・ボナーの一戦。ボナーがどれだけ食らいついて頑張れるかがみどころか。映画 『ロッキー』 では主人公がチャンピオンのアポロ・クリードに対して予想外の大善戦をすることでドラマになったが,この試合が面白いかどうかは,格闘技術の応酬というより男の根性みたいなものになるだろう。いずれにしてもアンデウソンが勝つことには間違いない。
 ボナーは必ず組んでこようとするであろう。 その出鼻にアンデウソンの膝が当たって試合終了とかね。

Antônio Rodrigo Nogueira vs Dave Herman
 デイヴ・ハーマンにはパンチがあるが,ノゲイラのボクシングも決して悪くない。勝負勘においてはるかに分があるビッグ・ノグが見事に復帰戦を勝利するのではないかと期待。

Glover Teixeira vs Fabio Maldonado
 日本でもよく試合をしていたテシーラは32歳で20戦18勝,11KO。タフで打たれ強く,どんどん前に出て相打ちをねらってヘビー級のようなパンチを叩き込んでくる選手。
 一方のマルドナドもとてもKO率の高い選手で,この試合は壮絶な打ち合いになるであろう。
 勝負カンがよく防御の安定したテシーラが勝つだろう。
 テシーラは今後が面白そうな選手であるし,こういう頑丈げでタフな選手が Jon Jones と対峙したときどうなるのか,など興味深い。

Jon Fitch vs Erick Silva
 エリック・シウバが強豪ジョン・フィッチに挑戦する構図だが,柔術柔道ともに黒帯のシウバの方がはるかに面白い試合をするので,格闘ファンとしてはここはシウバに勝ってほしい。

Phil Davis vs Wagner Prado
 前回,指が目に入って無効試合となったが,その再戦である。
 24歳のプラドは今のところ無敗。打撃力が高く,勝ち星のほとんどがノックアウトであり,今後とても期待のもてる選手。ショーグンとリョートを足したかのような風貌をしているが,その強さもホンモノだろう。
  一方のデイビスは,豊かな四肢と筋力に恵まれているわりには,打撃に切れ味がまったくない選手で,精彩を欠いたような試合が多い。私はこの選手は嫌いである。
 若くあばれはっちゃく的なプラドにぜひ勝ってもらいたいし, きっと勝つであろう。


2012年10月9日火曜日

亀田興毅 vs. Hugo Ruiz 予想

 亀田選手も決して弱い選手でないと思うし,頑張ってほしいところであるが,こんどのルイスは半端なくつよい相手。
 はやくタイミングのいいジャブが特徴的なアウトボクシングの選手かとおもえば,相打ちにも出てくる。接近戦では足とめておもいきり左を振ってくる。
 亀田もタフな選手だけど今回は相手が悪いかも。判定に持ち込めば勝機アリだが,ともすればKO負け濃厚じゃないかな。がんばれ興毅。

2012年10月5日金曜日

UFC on FX: Browne vs. Bigfoot

October 5, 2012 at the Target Center in Minneapolis, Minnesota.

Heavyweight: Travis Browne vs. Antonio Silva 
<前予想> するどい打撃と驚くべき跳躍力をもったトラヴィス・ブラウンが打撃を当てて勝つであろう。

 アントニオだけど馬場さんのシウバ,別名,生きたモアイ,今日はいつになく気合が入りまくってる。私のブラウン予想は変わらずだけど,これは好試合になりそうな気配。
 ブラウンはいつもどおりリラックスしたかんじ。
 
 ブラウンは序盤から右のオープンブローが目立つ。とび蹴りなども。派手なうごきのブラウンに対して,馬場さんは慎重。正面から小さく小さく真直ぐをあわせてくる。これはわからんぞ。馬場さんガードも高く実に慎重。
 ビッグフット,実にいいかんじである。
 一方,ブラウン,うごきが変である。明らかに左ひざを痛めている。いつ傷めたのか?

 膝を痛めているブラウンは片足一本で,とても闘える状況でなかった。
 ビッグフットの大きな右をもらい撃沈。私の予想はまたハズレ。
 今日の私の予想は,ことごとく外れた。


Welterweight: Jake Ellenberger vs. Jay Hieron
<前予想>  元海兵隊エレンバーガーの打撃にヒエロンがつかまってしまうか,あるいは誤魔化しきるかが勝負だろう。 しかし,いかんせんヒエロンはもう36歳,絶頂期のエレンバーガーに敵うとはおもえない。エレンバーガーの打撃が突破口になり勝つと予想。

 エレンバーガーのフットワークが距離のとり方が実にいい。距離をつめたときの相手の反応をじっくり観察している。プレッシャーに対して相手が下がるとみるやたたみかける様に攻めたてる。1Rはエレンバーガー。
 2R,ヒエロンのフェイント後の左がよく当たってる。しかしエレンバーガーが逆にフェイントで相手を誘い,タイミングよくテイクダウン。うまい。ハイレベルな試合である。
 3Rは静かに始まる。ヒエロンは前蹴りで距離をとり,まともに勝負をつけようとしない。結果的につまらない試合になった。
 エレンバーガーのノックアウトを期待したが,予想はハズレ,判定勝ち。

 エレンバーガーよ,上手いのはわかったけど君の持ち味は爆発力なのだから,それを前面に出していかないと観客に飽きられるぞ。


Flyweight: John Dodson vs. Jussier Formiga
 <前予想> 並外れた身体能力でいつもニコニコの28歳サウスポーのドドソンと,技巧派の27歳フォルミーガはとても興味深い一戦。私はフォルミーガが慎重に試合を進め判定勝ちと予想。
  
 期待通りレベルの高い試合。サウスポーのドドソンが時計回りにうごいて始まる。ドドソンがボディーによく伸びるパンチを当てている。ファルミーガは前後にうごきつつよく観ている。1R判定は難しい。
 2R,ファルミーガが前後ステップを交えつつも積極的に時計周りに動くようになる。ドドソンの出鼻に合わせた右のタイミングはかなり合ってきている。
 ファルミーガの離で試合が進むかと思いきや,ドドソンの左が当たった。ファルミーゴ倒れるも落ち着いて対処。しかし,ドドソンの左がまた顔面をかすめたところでファルミーゴが足をもつらせ転倒,さっきの左が効いていたのか,あるいは左のボディーが効いたのか。ドドソンが背後からパウンドでたたみかけ見事にTKO勝ち。私の予想は大ハズレ。
 すごいなマジシャン・ドドソン, その場でおもむろに宙返り。


Welterweight: Justin Edwards vs. Josh Neer
 29歳どうしの対決。ニアは33戦のベテランだが,エドワーズがよじ登りしがみつくようなギロチンで崩し,秒殺。


 ロンダ・ラウジー様が観客席に。満面の笑顔で,あいかわらずかわいらしい。 
 チェール・ソネンとジョセフ・ベナヴィデズがゲスト解説で放送席に来ていた。 


Lightweight: Jeremy Stephens vs. Yves Edwards
 ダナ・ホワイト氏はスティーブンスは今夜闘うと言い張っているが,どうなるのか。 


Lightweight: Michael Johnson vs. Danny Castillo 
 26歳マイケル・ジョンソンと33歳ダニー・カスティロ。 若いサウスポーのマイケル・ジョンソンに期待したがとても脆いアゴをしており,足腰にもねばりが無い。せっかくの長い四肢をもてあましてる感じさえする。一方のカスティロもフィニッシュすべきところでフィニッシュすることの出来ない詰めの甘い選手。両者ともに試合運びがパッとせず,その実力は戦績が物語っている。オクタゴンはスパーリングの場所ではない。
 2Rはじめ,カスティロがローキックを放った直後にマイケル・ジョンションの左が当たり(あえてカウンターとはいわない),それでカスティロは熟睡してしまう。全くしょうもない試合とはこのことである。
 両者とも上位は望めそうもない。 


Welterweight: Aaron Simpson vs. Mike Pierce
 アンコ体型の32歳のピアスと,スジばった38歳シンプソンの対戦。
 初回アロン・シンプソンの右とアッパー,膝がよく当たり,強引なスラムなどあってピアスは危うかったが,2Rが始まってまもなく相打ち気味に交錯した折,ピアスの右がシンプソンのアゴの正面先端ををとらえた。逆転KOでピアスの勝利であった。

2012年10月4日木曜日

部分的予想: UFC on FX: Browne vs. Bigfoot

Heavyweight: Travis Browne vs. Antonio Silva
 ヒョードルを倒したことで大きく株を上げたブラジルの馬場さんだが,するどい打撃をもったトラヴィス・ブラウンが勝つであろう。
 トラヴィス・ブラウンは30歳のハワイアン。2メートルを超える長身ながら爆発力があり,まさに破壊王。あの長身のステファン・ストルーヴをスーパーマン・パンチ一発で倒している。上位に確実に登ってくるであろう選手だ。

Welterweight: Jake Ellenberger vs. Jay Hieron
  ヒエロンがエレンバーガーの打撃につかまるか,誤魔化しきるかが勝負だろう。
 エレンバーガーは強力な一発もあり回転力もある,KO率63%の打撃の選手。まだ27歳ながら27勝6敗という実績もなかなかすごい。ヒエロンとは2006年に一度対戦しているが,そのときはヒエロンが判定で勝っている。今回はエレンバーガーが勝つであろう。

Flyweight: John Dodson vs. Jussier Formiga
 並外れた身体能力をもつドドソンだが,技巧派のフォルミーガも小刻みに速い選手。興味深い一戦。
 フォルミーガが慎重に試合を進めて判定で勝つだろうと思う。

 

2012年9月29日土曜日

UFC on Fuel TV: Struve vs. Miocic

September 29, 2012 at Capital FM Arena in Nottingham, England
  
 若い才能がどんどん萌芽してくるUFCは新興のプロ・スポーツとしてまっさかり成長中という感じ だ。
総合格闘技の試合はかなり高等な運動技術の応酬であるからして,野人のようにただ勇猛なだけでは通用しない世界である。ずばぬけて強い選手というのは身体能力がズバ抜けているのみならず,頭がよく,慎重で,とほうもない勇気がある。 

Heavyweight: Stefan Struve vs Stipe Miocic
 ステファン・ストルーヴは身長 213cm で,リーチが 215cm。これは Jon Jones (身長 193cm)と同じ長さであり,ともにUFCでは最大リーチ。いかにジョン・ジョーンズのリーチが長いかがうかがえる。
 さて若きストルーヴ,背がひょろ高くて細身だが,ねばりづよくあきらめず小さな打撃の出せる良い選手でもある。 Lavar Johnson を腕ひしぎ逆十字で破っている。また,Dave Herman を右アッパーで破っている。右アッパーがハーマンのアゴに見事に入ったけど,その前に左足で小さなインローを入れており,ダンヘンの得意な右に似たタイミングであった。
 かたやクロコップもどきのミオシッチは9戦全勝7KO。強力なパンチがある。

 予想としてはありきたりだが,ミオシッチの強打をストルーブがどういなすかだろう。ただ,振り回してくるミオチッチ相手に下がってばっかりでなしに,足 を止めて中から真直ぐを当てていく勇気がないとストルーブは勝てないんじゃないかな。私は若きストルーヴを応援したいし,ストルーヴが打撃をいなしつつ小さな一発を当てて勝つのではないかと思う。
 ただストルーヴはドス・サントスに既に負けているだけに,ミオチッチに挑戦権を与えたいようにも思う。打撃のミオチッチをドス・サントスにぶつけて壮絶な撃ち合いをさせた方が興行としては面白いかもしれない。

 序盤はミオシッチのスピードが勝り,パンチもよく当たっていた。一方のストルーヴは反応が鈍く,打撃もスローモーであった。バランスもあまりよくない。手足の長い選手にとって,転ばされやすいというのは致命的である。序盤を見た限りでは,私はミオチッチが勝つだろう,と思った。
 だけど上背があり体の柔軟な選手というのは,打撃をあまりまともにうけないものらしい。中盤から上背を生かしたアッパーカットがタイミングよく入り,それから形勢が逆転した。さすがヘビー級,不用意な一発をもらっただけで状況はガラリと一転する。
 最後はストルーブがおどるようにプレッシャーをかけて猛攻。上背ある選手があんなふうに迫ってくると,すごい圧力なのだろう。ミオシッチをノックアウトした。
 ストルーブは,勝つには勝ったが,序盤にだいぶ打撃をもらっていたことをおもえば課題満載であろう。あれではまだまだチャンピオンにはなれない。
Welterweight: Dan Hardy vs Amir Sadollah
 一応英国紳士のダン・ハーディは地元だけにすごい人気。それにしても彼はとても嬉しそうに試合をする。闘うことが自分の存在の証明なわけで,そういう仕事にめぐりあえた人というのは何よりのことだ。

Bantamweight: Brad Pickett vs Haiti Yves Jabouin
 ピケットのアッパカットがカウンターできれいに入って一発であった。バンタム級とは思えない見事なノックアウトだった。

Lightweight: Paul Sass vs Matt Wiman
 24歳と若いポール・サスは13戦全勝,12サブミッション勝ち。格闘家とは思えない端整な顔立ち,細く通った鼻筋のすごいイギリス人顔というか,ようするにハンサムである。 若く端整な美男子だけれども,なかなかすごいラフ・ファイトを好む。
 かととおもいきや,一瞬のすきをついたマット・ワイマンが腕ひしぎ逆十字で決めた。サスに黒星がついて少し残念だが,とても面白い試合であった。

Welterweight: John Hathaway vs John Maguire
 格闘家でも本当につよいのになると,とても端整な顔立ちをしてるものだが,ジョン・ハサウェイはまさにそんな感じの選手である。 サウスポーのマグワイヤは右フックを当てるのがうまいが,反面ハサウェイの長~いリーチの右のまっすぐをもらいやすい。ずんぐりしたマグワイヤよりも手足の長いハサウェイの方が優位に打撃戦を進め ているかんじであった。ハサウェイの判定勝ち。
 
Welterweight: Che Mills vs Duane Ludwig
  ルドウィグは膝を傷めたらしい。まったく歩けない様子をみると,どこか靱帯を断裂したようだ。

Light Heavyweight: Kyle Kingsbury vs Jimi Manuwa
 ナイジェリアの怪物ジミ・マヌワは11戦全勝10KOという,とほうもない強打の選手。これは楽しみな選手である。ライトヘビー級だけに近 いうちに Jon Jones との対戦があるかもしれず,これは注目したいところ。
 しかし蓋を開けてみたら,マヌワは打撃がめっぽう強いのだが,重心が高く,立ち相撲が異常に弱い。ちょっとした足技ですぐ転でしまう。これではいくら強打があってもUFCでは上位には行けないだろう。
 キングスベリの左目が完全にふさがってしまったために試合終了。予想どおりマヌワの打撃が圧倒したけれど,マヌワは足腰のねばりが無く課題山積み。もう 32歳であることも考えると,ことさらに期待できる選手というわけでもなさそうに感じた。
 
Featherweight: Andy Ogle vs Akira Corassani
 スウェーデン人のくせして私と同じ名前とは何事だ,とおもいきや,本名はアキラでなくて Hamid だそうな。イエテボリ出身。ラストネームの Corassani がなんとなく黒澤みたいだから,ニックネームがアキラなのかも。彫りの深い濃い顔で肌が茶色く,北欧人というよりむしろアイヌとかイヌイットっぽい風貌をしている。

Middleweight: Tom Watson vs Brad Tavares
 ブラッド・タヴォーレスはハワイ出身で8勝1敗の24歳。ゴルファーみたいな名前のトム・ワトソンは30歳,ショーグンの兄のニンジャをノックアウトしたことがあるらしい。 
 タヴォーレスは打撃が的確で上体もやわらかい,とてもクレバーな選手だ。一方のワトソンはアグレッシブで力強いけど,序盤からエキサイトして肩で息してる。こういう選手は,あんまり強くない。呼吸のしかたでだいたいどういうレベルの選手かわかる。
 タヴォーレスが勝ったが,ワトソンもよく頑張り,前座とは思えない好試合となった。
 
Catchweight (183 lbs.): DaMarques Johnson vs Gunnar Nelson
 ガナー・ネルソンはグラップリング世界選手権で銀メダリスト。総合格闘では今のところ無敗。ウェルター級で,まだ24歳。これはホープ選手。珍しいアイスランドの選手だ。町田のような空手風な構えをする。非常に面白い選手。相手の出鼻によく反応するし,グラップリングだけでなく,立ち相撲も強い。これはウェルター級の上位陣に対してもかなりの脅威の選手になるとみた。

Featherweight: Jason Young vs Robbie Peralta
 ともに26歳。ジェイソンはロンドン出身で大歓声だが,ロビー・ペラルタの方が戦績はいい(三敗のみ)しKO率も高い。
 すごい試合だった。予感どおりロビーの秒殺ノックアウト。両者打ち合いで,たまたま先に右フックが当たったから勝った,というかんじ。やはり一発あたりさえすれば必ず倒せるという打撃をもった選手は,待って狙って打つよりも,思い切ってさっさと距離に入ってめちゃくちゃ振り回した方が観客もよろこぶし,良い結果につながるようだ。

2012年9月23日日曜日

UFC 152

 UFC 152 September 22, 2012 at the Air Canada Centre in Toronto, Ontario, Canada.

 Jon Jones vs Vitor Belfort
<試合前>
 もう結果は見えてるけど,ベウフォートのパンチが万に一つにでも当たれば面白いのだけど,まあ,まず無理だろうね。 盛り上げようとして る解説が実にそらぞらしい。ダメージによってはベウフォートはこれで引退を決定づけられるだろうね。ジョーンズは自身満々な顔。
 <試合中>
 さっきのジョーンズのサイド・キックで,ヴィトーのあばらは折れてるのではなかろうか。ジョーンズはレスリング出身ながら空手家顔負けのいやらしい関節蹴りしてくる。よかったよ,最後は顔面トマトじゃなくサブミッションで。
 <試合後>
 つよい! Jon Bones Jones
 彼の強さが本物らしいのは,試合後も正確に相手の強さと自分が勝った理由を分析してる点だろうかね。にくたらしいくらいに強いね。私が彼を応援するとしたらプレデターみたいな宇宙人と対戦するときだけだろうね。
かたや,ベウフォート。さすが一瞬だけど大きな見せ場をつくってくれたね。久しぶりに観てた私までエキサイトして拳が空を切った。雲のジュウザが拳王ラオウに腕ひしぎをしかけた場面を思い出したよ http://mmajunkie.com/news/30768/ufc-152s-jones-belfort-head...
 ダナ氏がジョーンズにベルトを巻かなかったが,これは応募したファンにやらせなくてはならなかったかららしい。


 Joseph Benavidez vs Demetrious Johnson 
<試合前>
 軽量級。まったく実力伯仲,どちらもテクニシャン,ノックアウトは無いだろうね。 じっくりとハイレベルのテクニックを鑑賞したい試合。日本の山本KID徳郁がデメトリアス・ジョンソンと対戦したけど,まるで歯がたたなかったっけな。全盛期の山本だったらもっと面白かっただろうけど,もう運動能力が違ってた。
 勝った方がチャンピオンに再挑戦ということかな。いや,バンタム級でなくてフライ級か。デメトリウスはチャンピオンだったか。
<試合中>
 デメトリアスは,山本とやった頃よりはるかに上手くなってる。軽量級らしくナマクラパンチで派手さは無いけど,負けない戦い方を知ってるね。

 無想拳の極意は,相手が自発的行動としてパンチを放とうとするきざしに反応して,どれだけ正確なパンチを反射運動で放てるかだね
 本当に上手い選手というのは,ガードやスウェイでもって派手に打撃をかわすのでなく,相手が打撃を繰り出そうとする矢先に,スッと当たらない場所へ移動するね。もっと上手いのは,相手が打撃を放とうとする矢先に,ちょんと打撃を当てる。軽く当てるだけでも効いてノックアウトになる。
 難しい判定だろうね。まあジョンソンだろうね。
 デメトリウスとベナヴィデズの高いレベルの試合にブーしてたよな人は格闘をまるでワカッテない。見るなとか語るなとか言う気はないが,私は聞く耳もたん。


 Michael Bisping vs Brian Stann
 <試合前>
 これはたのしみな試合。イギリスのビスピンと,アメリカの元GIのスタン。私はビスピンが判定勝ちかな。ビスピンは日本の秋山成勲といい試合して,判定で勝ってる。
 ブライアン・スタン,すごいアメリカ人顔だけど東京生まれ。 おそらく横田基地だろう。てことは親も軍人。かたやビスピンはいかにもブリティッシュ顔。こういうの面白い。どちらも,すごくいい顔していて,肌つやも筋肉もハリもいい。これは面白い試合になるとみた。
 スタンの打撃が当たれば,だけど,それをビスピンがどう誤魔化すかだろう。
 <試合中>
 序盤はスタンが押し気味。いい右が離れ際に入ったりしたが,しかしビスピンが誤魔化しきって,中盤以降は完全に見切ったかんじ。ビスピンの判定勝ち濃厚。
<試合後> 
 泥試合だったけど予想通りビスピンの判定勝ちだな。スタンは悔いが残るだろう。 
 勝ったビスピンを称えるスタン,いい男だなあ~かっちょええなあ~。

 
 Matt Hamill vs Roger Hollett 
 ハミルは Jon Jones にボコボコにやられたけれど,ジョーンズの肘の直下打ちで反則勝ちした選手。ようするにどっちもそんなに強くなくて,あんまり興味ない。Hollett が勝つろう。せいぜい盛大にノックアウトしてくれ。
 しかし,Hollett も下手だな。ちっともチャンスがわかってない。つまらん試合。解説は Hamill が強気で押してると言うけど,私はそれでも Hollett の方が上手いと思うし,彼が勝つとおもう。相手の打撃がよく見えてる。いつも強そで弱い Matt Hamill。


 Charles Oliveira vs Cub Swanson
 ブラジルのホープ,フェザー級の Oliveira は22歳にして 19戦16勝。バランスのよさ。相当デキる感じがひしひしと伝わってくる。と思ったら,眼がさほど良くなかった。打撃をまともにくらって ダウン,KO。スワンソンの右フックがテンプルにもろに入った。ちょっと残念。