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2013年3月17日日曜日

UFC 158: St-Pierre vs. Diaz

Welterweight Georges St-Pierre vs. Nick Diaz
 この試合も,予想どおりといえば予想どおり総合力にてGSPが圧倒,勝つべくして勝ったというような試合となった。ディアズは最後まで自分の距離で闘わせてもらえず,GSPのすばやい出入りとテイクダウン,そしてスーパーマンパンチに翻弄され続けた。中盤GSPにややピンチが訪れた場面があったが,それはGSPが足を止めて撃ち合いに応じたときであった。これも予想どおり。
 
 そしてこれまた予想どおりといえば予想どおりなのだが,ディアズは引退を表明した。今回は試合そのものに対する不平というよりも,自身が総合格闘を続けることに疲れたような感じであった。大麻常習者は物事への執着心や,努力して何か成し遂げようという根気が減退してゆくといわれてるが,大麻を常習していると公言しているようなニック・ディアズも,まさにそんなかんじである。


Welterweight Carlos Condit vs. Johny Hendrickss
 序盤から猛烈な打撃戦の攻防で,大変みごたえのある試合であった。ヘンドリクスが左を狙いすぎれば,それに対して十分な対策を練ってきたコンディトが有利になるのではないか,と思って観ていた。ヘンドリクスが勝つとすれば,左手以外によるものだろう,と。
 勝負を決定づけたのはヘンドリクスの左でなく,彼のレスリング力であった。中盤にヘンドリクスは一番の頼りであった左拳を傷めたらしく,左に頼るのを止めてテイクダウンを狙うようになり,ほとんど全てにおいて成功していた。左拳を傷めたことがかえって勝利を確実にしたといえるかもしれない。
 コンディトの打撃の鋭さは最後まで消えることなく,試合を大変緊迫した面白いものにしてくれていた。この日一番の好試合であったろう。
 

Welterweight Jake Ellenberger vs. Nate Marquardt
 マーコートは序盤から左足に力が入っていなかったように見えた。ついこないだのストライクフォース最終戦でさんざんに左ひざに蹴りを受けていたが,その傷が完全に癒えていなかったのではなかろうか。
 ケージ際でエレンバーガーの強くこすりつけるような右が,マーコートの鼻を折ったようだ。たまらず伏せたマーコートの後頭部をかすめるように強い右があたり,そのまま突っ伏すように倒れた。意識はあったが,後遺症が心配になるような当たり所であった。
 マーコートはこれで引退するのではなかろうか。しないにしても,もう上位レベルへの浮上はなさそうである。しかしこの人は格闘が好きな人なので,そう簡単に「格闘やーめた」などとは言わなそうではあるが。


Middleweight Chris Camozzi vs. Nick Ring
 カルガリーのニック・リングはスピードに自信があってか,ほぼノーガードでフットワークのみで試合に臨んでいた。しかし相手を倒そう,などという色気はさらさら無しで,はっきりいって大変つまらない試合であった。リングの試合というのはいつもこんな感じである。
 たしかに序盤は身体能力の差でもってリングが圧倒してるかんじであったが,彼ももう34歳,長く続くものでもなく,徐々にスピードは落ちていった。また打撃というより相手に触っているだけのニックの消極的な攻めがあまりに印象がわるかった。鈍重ながらひたすら前進していたカモジの方に攻勢点がついた感じであった。


Lightweight Mike Ricci vs. Colin Fletcher 
 地元の美男子マイク・リッチと英国の怪人の対決。リッチーはサウスポで豊かな肩幅をもち,よく伸びる右のリード,左のストレートがよろしい。また,リッチーはボクシングだけでなく相撲もつよいね。バランスいいし。寝技だって上手く,悪くない選手。



Welterweight Patrick Côté vs. Bobby Voelker
 元ストライクフォースの打撃王に対して,コテが強気にラフ・ファイト行っている。うごきもスムーズで調子もよさげで自信もありそうである。審判によく見える攻撃の仕方をよく知っているかんじである。
 序盤はコテが攻めで圧倒しているようなかんじであったが,ヴォルカーも踏ん張りどころしのぎどころをよく知っている選手で,絶対に一方的にやられない。結果,後半はヴォルカーが完全に盛り返し,どっちが勝ってもおかしくない面白い試合となった。
 序盤の攻勢をとってコテが勝ったが,この試合が五回戦であったらヴォルカーが勝ったのではなかろうか。判定基準の採点のことだが,得点配分は各ラウンドごとだけでなく全ラウンドを総合してどうだったか,という得点枠も設けてはどうだろう。私はヴォルカーの方が勝ったような気がしたし,こういうタイプの方が好きだ。


Featherweight Darren Elkins vs. Antonio Carvalho
 エルケンスには右のクロスがあると予想に書いたが,やはり試合を決めたのもその右のクロスだった。カルヴァロの耳のあたりに入って,それが効き,バランスがおかしくなり,それが終わりの始まりだった。ふたたび強い右が入り腰が落ちたところで,レフリーが止めてしまった。賛否あるが私は絶妙なストップだったと思う。
 今日のカルヴァロはガードを高く掲げてパンチ主体の攻撃をしていたが,パンチの得意な相手にパンチで勝負に出るのは見ている側にとっては面白いが,必勝策とは言いがたい。彼の持ち味の多彩な蹴りを主体とした攻めで行ってたら,また違った結末だったのではなかろうか。
 

Welterweight Dan Miller vs. Jordan Mein
 一通りの一流選手と対戦してきたベテランのミラーが無難に勝つかと思っていたが,この少年のような顔をした23歳のミエンという選手は天然につよい若者のようだ。
 突破口を見出しすやいなや,血のにおいをかいだ鮫のように獰猛になり執拗に攻めたてる。これはまた面白い選手がトップに食い込んできそうである。


Lightweight Daron Cruickshank vs. John Makdessi
 カラテ対テコンドーの試合であり,緊迫した打撃戦のいい試合であった。
 予想どおり当てるのが上手く眼の良いマクデシが徐々に主導権を握るようになり,最終ラウンドでは完全に圧倒していた。独特のコンボも出してきてまるで格闘ゲーム『鉄拳』をみているようなかんじであった。
 ただ,やはりあそこまで実力差を見せつけるのであれば,最後はノックアウトで決めて欲しかった。

 

2013年3月13日水曜日

UFC 158: St-Pierre vs. Diaz 予想

Welterweight Georges St-Pierre vs. Nick Diaz
 因縁の対決とでもいうべきか,元ストライクフォースの王者ニック・ディアズと,UFCで長年の無敵王者GSPとの待ちに待った対決である。
 ディアズには蹴りもあるし,寝技は立派にブラジリアン柔術の黒帯である。ひとつひとつの攻撃を見れば決してGSPに見劣りはしない。そして彼のなによりの武器はタフネスさだろう。相手が出るのにあわせるように自分も出て,とにかく相打ちを狙ってくる。お互いに足を止めてサンドバッグを撃ち合うようなパンチの交換をしていれば,当然それはディアズが有利な展開になるだろう。
 しかしGSPはサンドバッグではない。上下の技から技へのつながりの速さとスムーズさ,そしてどこから攻撃が飛んで来るかわからないという攻めの持ち駒が多彩さにおいてGSPは格闘界でずば抜けてる。とくに彼の得意とするスーパーマン・パンチはフェイントのタメが長く右が来るか左から来るか最後の最後までわからない。相手との距離の出入りの速さではディアズを圧倒するだろうし,グラウンドでもGSPの方がうまいだろう。

 以上のことを私なりに考えてみるに,総合力とトータルバランスで満点のGSPが勝つべくして勝つ試合になるだろうとおもわれ,ディアズはコンディット戦以上に苦戦してフラストレーションの溜まる試合になるのではなかろうか。ディアズが勝つとしたら,積年の因縁と意地でGSPが足を止めてディアズの打ち合いに応じたときかと思われる。
 ディアズは負けた腹いせに 「格闘なんか,やめた」 とか言わないで,またいろんな相手と試合をしてほしい。


Welterweight Carlos Condit vs. Johny Hendricks
 メインよりもこちらのセミファイナルの方が興味がある。 
 試合運びのうまさと多彩な蹴をもつコンディットはこないだGSPとすごく良い試合をしていた。
 一方,ヘンドリクスの華々しい戦績を振り返るに,豪快な一発が当たって早い回に試合を終らせてしまったというのが多く,実際どれくらい “強い” のか,まだいまひとつよくわからない。強いのはわかるのだけども,相手が一流の試合巧者で自分の打撃が誤魔化されたとき,そこからどう突破口を切り開けるかなど,まだまだ未知数な点が多い。

 コンディットが巧みに試合の主導権を握り,ヘンドリクスのタイトル挑戦はまたしばらくおあずけ,ということも十分考えられる。
 逆にヘンドリクスがコンディットをも蹴散らす勢いであれば,そのままGSPをも圧倒するかもしれない。しかし野球でも格闘でも一発への期待ほどアテにならないものはない,ということは周知のとおりである。


Welterweight Jake Ellenberger vs. Nate Marquardt
  打撃力のあるエレンバーガーが,ベテランのマーコートとぶつかる。これは楽しみな一戦。

 マーコートはストライクフォース最終日でふがいないメイン・イベントを演じていたが,ああいう試合を観せられるとがぜんエレンバーガーを応援したくなる。どちらが勝つにしても,ここは豪快に一発で決めて欲しいところ。


Middleweight Chris Camozzi vs. Nick Ring
 カルガリーのニック・リングの唯一の敗けはティム・ボウチによるものだが,ずば抜けて強いという感じの選手ではない。日本の福田力にも微妙な判定で勝ってる。

  つまらない試合になればニック・リングが勝つかもしれないが,私としては26歳のカモジの方に期待したい。


Featherweight Darren Elkins vs. Antonio Carvalho
 松涛館空手と柔術で黒帯をもつカルヴァロは多彩な蹴り技が特徴的な選手だ。日本の日沖選手にも判定勝ちをしたことがある。が,攻めにおいてやや慎重すぎるところもある。
 一方のエルケンスは,右のクロスをいいタイミングで入れてきたりする。この試合おそらく打撃の応酬になるのでは。


Welterweight Dan Miller vs. Jordan Mein
 弱冠23歳にして既に三十戦を超える戦歴(26勝8敗)をもつミエンと,いわゆるウェルター中堅どころのダン・ミラー(14勝6敗)の対戦。
 このジョーダン・ミエンという選手は,長い四肢を生かして距離をとって打撃をタイミングよくコツコツ当ててくるタイプであるが,さほどの爆発力や上手さをもった選手というわけではなさそうだ。これまでさほど強い相手と闘っていない。その点においてこの試合は,ミエンの力量を測る上で格好の力試しといったところか。

 この試合に勝った方が上位へ抜け出る道が拓けるといったところであるが,私は一通りの一流選手相手に判定まで持ち込んでいるダン・ミラーが無難に勝つだろうとおもう。


Lightweight Daron Cruickshank vs. John Makdessi
  松濤館空手の黒帯のマクデッシは打撃技術が高い。また眼もよく頭をよく動かして相手の打撃を上手にかわす。しかし,技術にこだわりポンポン当てるだけで,相手をノックアウトしてやろう,という執念があまり感じられない。
 一方のクルックシャンクは学生レスラーでもあり,テコンドーの達人であり,キックによるノックアウトもある面白い選手。

 前座ながらかなり面白い試合になるのではないか。

2013年3月3日日曜日

UFC on Fuel TV: Silva vs. Stann


Light Heavyweight Wanderlei Silva vs. Brian Stann
 全体的にフラストレーションの溜まるような試合の多い興行であったが,この試合がすべて帳消しにしてくれるような一戦であった。とにかく,ものすごい試合であった。
 両者,下がることなく真っ向からの殴り合い。PRIDE 黎明期のような試合であった。打ち合いはすべて相打ちであり,殴り殴られで,それに打ち勝って倒したヴァンダレイもすごいが,端整な顔を血まみれに して真っ向から向かっていったスタンの根性もすごかった。

 こんな試合を見せられると,もう何も言うことはなく,何も言うべきでなく,ただただ拍手するしかない。


Heavyweight Mark Hunt vs. Stefan Struve
 序盤はモタモタした試合展開で,またか,という感じであったが,しだいにマーク・ハントのパンチが当たりだして,最後は見事すぎるほどのノックアウトであった。さすがは K-1,PRIDE の立役者である。最後の渾身の左フックを振るったハント,ストルーヴが崩れるように倒れるのを観るやいなやその場できびすを返し,勝利を確信して両手を挙げていた。いかにもノックアウト・アーチストであった。ストルーヴは下顎骨折したらしい。

 何度か相打ちの場面があったが,最初はリーチのあるストルーヴの真っ直ぐがよく当たっていたのに,しだいにハントのパンチがよく当たるようになっていった。
 どういうトリックなのか知らないが,手の長いストルーブに対してまったくリーチ差を感じさせないようなマーク・ハントの魔法のような踏込みは,今後ジョン・ジョーンズと対戦する選手にとっても大変参考になるのではなかろうか。
 

Lightweight Takanori Gomi vs. Diego Sanchez
 五味と対戦するサンチェスは計量をパスできなかったらしい。プロとして失格である。五味は今回はテイクダウン対策をみっちり練習したらしく防御は良かったが,攻撃面で相手を最後までとらえきれなかった。それ以上にサンチェスが何をやりたいのかよくわからない試合をしていた。

 判定でサンチェスの勝ちであったが,どっちが勝ったとしてもいまひとつの試合内容であった。
 五味にとって,内容は良くても負けは負け。この負けは痛い。


Middleweight Yushin Okami vs. Hector Lombard
  雷 vs 稲妻という対戦であり,サンダー岡見がいかに立ち位置でもって強打ロンバードの稲妻パンチを封じ誤魔化すかが勝敗のカギだろう,と思って観ていた。
 が, しかしふたを開けてみれば,岡見が安定感たっぷりの試合を見せてくれた。ヘクターの速いパンチに対しても先手先手と先読みして,危なげなくさばいていた。きっとイメージどおりだったのだろう。むしろ岡見の速い右のジャブの方が鋭く感じられ,また実際よく当たっていた。最後,混戦から岡見のガードが下がり気味のところに,ロンバードのパンチが一発二発入り,ちょっと危ない展開にもなったりしたが,総じてみれば岡見が圧倒した感じであった。

 まさに,強い岡見が帰ってきた,という印象であった。


Featherweight Mizuto Hirota vs. Rani Yahya
 廣田は残念であったが,あまりにも実力に開きがあった。
 しかし,3Rでガス欠になって逃げまわるようなヤーヤという選手,あんまり好感もてない。


Welterweight Dong Hyun Kim vs. Siyar Bahadurzada
 一発のあるバハデュザダが圧倒するか思ってみていたが,キムが上手さで圧倒した試合であった。
 パンチのタイミングのことしか頭に無いバハデュザダに対し,キムの方が攻めが多彩で,テイクダウンをことごとく成功させていた。グランドの展開になればキムの方がはるかに上手く,まるでレッスンつけてるような試合展開となった。

 キム・ドンヒュンがまた着実に階段を上に登り始めた,という感じであった。


Middleweight Riki Fukuda vs. Brad Tavares
 序盤の福田選手がとても良くて瞠目したが,やはり攻めが単調なのか,しだいにタヴォーレスが見切るようになり,的確な打撃で迎え打たれていた。終ってみればいつものパターンであった。

 福田はまるでとりつかれたように前へ前へと出るのだけれど,それに対して相手が何を考え何を狙ってくるかとかそういうことは考える余裕はみられず,自分自身がくり返し練習したパターンの攻撃のことしか頭にないようであった。それを見切ったタヴォーレスの方が一枚も二枚も上手であった。


Bantamweight Takeya Mizugaki vs. Bryan Caraway
 かなりきわどい接戦であったが水垣選手が見事に判定勝ちをおさめた。中盤にカウンターをまともにもらって腰が落ちた場面があったが,なんとか持ちこたえた。水垣選手は,相手が出てくれば自分も出てゆく選手であり,いつも見ごたえのある試合をしてくれる。

 勝って号泣する水垣選手,ここまで大泣きできるのは,それだけの努力を重ねてきた証拠だろう。


Lightweight Cristiano Marcello vs. Kazuki Tokudome
 徳留一樹選手を観るのはこれが初めてであったが,なかなか強そうな雰囲気をもっている選手であった。格闘も上手く,サウスポーでアテ勘もあり,相撲も強く,いいハートももっているようだ。
 今後の課題を挙げれば,コンボが交錯すると頭が止まりがちなのと,押されるとまっすぐ下がってしまう悪い癖だろう。これは日本人選手全般にいえることだが,顔面への速いパンチに対する反応がどうも鈍い。鈍いなら鈍いでガードを高く掲げるとか,頭をつねに動かすとか対策があろうに,そういうことをしないで,まるで天才ボクサーがそうするみたいにガード下げてじっと静止して構えてたりする。それはパンチのおそい日本人相手なら通用するかもしれないが,世界のトップレベルには通用しない。世界の上に行くためには,速い打撃に丁寧に対処してできるだけパンチを顔面にもらわないように工夫することが大切だろう。
 
 いずれにせよ見事にUFCデビュー戦を勝った徳留選手はまだ25歳。これから日本の格闘界のエース的存在になるのではなかろうか。


Bantamweight Alex Caceres vs. Kyung Ho Kang
 韓国イケメン美男子格闘家のカンは,練習では強そうだけど,ケンカがあまり上手くなく,格闘センスもいまひとつという印象であった。一生懸命さは伝わってきたし,相手はガガンボのように非力なカセレスであったが,結局捕まえることが出来ず,最後まで翻弄された感じであった。


Welterweight Marcelo Guimaraes vs. Hyun Gyu Lim
 いい試合ではあったが,両者とも単発が多く,まるで誰かがコントローラで動かしているような格闘ゲームのキャラみたいなぎこちない動きであった。リムが出てくる相手に対して真っ向から打ち合いを挑むのはよかったが,パンチにキレがなかった。最後はリムがヒザでグィマライスをノックアウト。しかし前座としてどれだけ根性みせてくれるかと秘かに期待していたのだが,両者ともさほどに期待できる選手ではないというかんじであった。