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ツィッタ―始めました。
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2013年10月20日日曜日

UFC 166: Velasquez vs. Dos Santos 3

Heavyweight Cain Velasquez vs Junior dos Santos
 この試合にかけるシガーノの意気込みは相当なものであると思ったが,それ以上にヴェラスケスが燃えていた。
 場内コールのときにドスサントスは前に出て相手をマットに倒すしぐさをするのだが,なんとヴェラスケスもそれにあわせて前進,立ちはだかるようにしてシガーノを睨みつけていた。昔の北天佑と千代の富士の睨み合いのようであった。観ている方が怖くなるほどの壮絶な試合になるであろうことが,始まる前から見て取れた。両者ともコンディションは万全である。

 開始早々に突進して相打ち,かと思いきや,どうやらシガーノのフックが先に当たったようであった。シガーノが優位に立つかと思いきや,ヴェラスケスは引かずにぐいぐい前進して,近距離から真っ直ぐのワンツーを出してくる。テイクダウン狙いで足をとったかと思えば,上へワンツー。ケージに寄せても休むことなく相手の膝を膝で攻め,離れ際にパンチ。開始早々の一発でどうなるかと思ったが,ラウンド終盤にはもう完全にヴェラスケスのペースとなっていた。

 回が進むごとに,両者の実力差は歴然としていった感じであった。所々でシガーノもタイミングのいいパンチや肘を当てるのだけど,ヴェラスケスはそこで下がらずに,もたれかかるようにして前へ前へと出て,休まず攻めてゆく。全くすごい勝利への執念である。

 三回に山場が訪れた,ヴェラスケスのいいパンチが当たり,シガーノは棒立ちのままノックアウトされる格好となり,ヴェラスケスがさらに追撃して,パンチがまともに顔面に入っていた。あきらかに決着がついていた。
 そこで試合を止めて欲しかった。
 レフリーのハーブ・ディーンは,止めようとして手を挙げかけたのだが,もみ消した。これは好判断ともいえるし,あるいは最悪の判断ともいえる。
 シガーノは立ってはいるものの完全にふらふらであった。それでも試合は続行された。
 
 シガーノに対するドクターのチェックも実にいいかげんだったようにみえた。医師の質問や指示をシガーノはまったく理解していなかった。それにもかかわらず,最後に「Are you OK?」と訊かれて「OK」と言い,それで結局続行。一体何のためのドクター・チェックなのか。
 シガーノもヴェラスケスも,稀有の才能をもった選手であり,こんなふうな潰しあいをさせるべきではなかったのではないか。

 試合後,シガーノは「What can I say? He just beat me up」と笑いながらあっけらかんと語ってた。最高の試合といえば最高の試合だったかもしれないが,私は単純には喜べず,むしろ悲しいような,複雑な気持ちになってしまった。

 勝因はヴェラスケスの前進力と回転力,そしてなにより高い心肺能力だったろう。


Heavyweight Daniel Cormier vs. Roy Nelson
 予想どおりの試合展開であった。コーミエはネルソンの危険な距離には長居せず,出入りを工夫してネルソンからは有効な打撃は一発ももらわずに最後まで丁寧に試合を進めた。
 組み合いでも,コーミエは相手の側面にぶらさがるように体重をかけて,自身の体力を節約しつつ相手の動きを封じ,実に上手に相手の体力を奪っていた。地味な試合であったけど,見るべき所は沢山あった。

 メレンデズとサンチェスの壮絶な死闘の直後だっただけに,やや退屈に感じたファンも多かったようだけど,コーミエはしっかり自分の明日へつなげる仕事をしたといえるだろう。
 一方,ネルソンは,いくら一発があったとしても,あんな垂れ下がった腹をしていては,まず上へは上がれない。ローブローでも何でもないコーミエの膝を,急所に当たったかのようにアピールして時間を稼いで休んたりしていた。こういうことを始めたら,もうそろそろ引退を考えるべきであろう。


Lightweight Gilbert Melendez vs. Diego Sanchez
 誰もが予想したとおり打撃技術においてメレンデズが歴然と上まわっていたが,サンチェズが歯を食いしばっての鬼神のような頑張りをみせ,血みどろの大死闘となった。サンチェスの根性はハッタリでも何でもなく本格的にすさまじい闘魂であった。
 メレンデスの打撃技術の高さは一級品であり,序盤にボディーを狙って打っていたストレートが有効であった。一方,サンチェスの序盤のミドルへのキックもまた強烈であった。  
 終始メレンデズが攻勢であったが,要所要所でサンチェズのアッパーや相打ちがまともに入り,あわやという場面もあり,最後まで目が離せない死闘であった。
 

Heavyweight Gabriel Gonzaga vs. Shawn Jordan
 試合前はジョーダンがとてもいい表情をしており,どちらが勝つかまったくわからなくなった。
 が,ふたを開けてみれば,予想したとおり歴然とした実力差があった。ゴンザガが相手のパンチをもらいながらも,冷静に次のパンチにカウンターをあわせ,見事にジョーダンを倒した。
 

Flyweight John Dodson vs. Darrell Montague
 ドドソンの顔つきは試合前後と試合中とでまるで別人のようである。試合中は眉目が別人のようにりりしく,理知的である。

 スピードと打撃力でドドソンが圧倒した。予想は的中である。
 序盤モンテギューもドドソンの出鼻にタイミングよくパンチを出していた。しかしスピードでワンランク上のドドソンは,捨てパンチを出して相手の反応を誘いそこを迎え打つなど,まったく別次元の速さであった。

 序盤からドドソンの強力なパンチが当たり,もう勝負が決まるかという場面があった。が,落ち着いて相手の顔をじっと冷静に観察しつづけ,決してあわてて攻めることをしなかった。デメトリアス・ジョンソンとの対戦で敗れて以降,またさらにもうひと回り強く成長したかんじである。
 ドドソンのこの次が楽しみである。また近いうちに王座に挑戦するのだろう。


Preliminary card
Middleweight Tim Boetsch vs. C.B. Dollaway
 ボウチの方は序盤からパンチのたびに体が流れ,あまり良くなかった。
 一方のダラウェイはとても慎重に闘っており,いいかんじであった。しかし挑発行為までしてみせるとは意外であった。
 
 残念ながら,ダラウェイの指がボウチの目に入るアクシデントが二回連続して減点があった。この減点が大きく判定に響いたようである。
 判定で私の予想どおりボウチ勝利であったが,内容的には私の予想は外れダラウェイの方が良かったように思えた。


Welterweight Nate Marquardt vs. Hector Lombard
 マーコートは最近どうしちゃったのだろう,という感じである。こないだストライクフォースで王座から陥落して以降,試合するたびに弱くなっていってる感じである。
 今日も,相手の打撃から逃げるようにして身をかがめ際に側頭部に力強いフックをもらい,そのまま一気にパンチでたたみかけられ勝負がついた。

 ここのところ冴えない試合の多かった両者であったが,ロンバードの方は得意の強打が見事に当たり,今後につながる会心の勝ち方であったろう。
 マーコートはこれで引退ではなかろうか。


Women's Bantamweight Sarah Kaufman vs. Jessica Eye
 コーフマンは体重のよく乗った綺麗なストレートを放つ選手である。
 が,アイが終始丁寧で慎重に闘っていた。距離を上手にとり,柔軟な体を生かしてコーフマンの強打を不発にしていた。
 きわどい試合であったが,私の予想ははずれ,アイが勝った。


Lightweight George Sotiropoulos vs. KJ Noons
 ヌーンズは左ジャブのボディーを序盤によく当てていたし,打ち合いになればヌーンズの方が勝気であった。一方,ソティロポロスはやや打たれ弱いところがあるという印象であった。最後までヌーンズの土俵であるボクシングで勝負させられたのは,ヌーンズのテイクダウン防御が優れていたからだろう。
 
 かといってヌーンズの出来が良かったかといえば,必ずしもそうでもなく,パンチを打った後に体が流れる場面が多かった。私はソティロポロスの方が上手だったように思えたが,当てた手数で上まわったのだろう。ヌーンズが勝った。

 
Welterweight TJ Waldburger vs. Adlan Amagov
 アマゴフという選手,力あり,打撃よし,バランスよしで,かなりの好選手である。
 至近距離で回転しての後ろ蹴りを腹部に当てていたが,その回転は並みの速さではなかった。そこから組んで膠着かと思いきや,組んだ状態からの左フック,手打ちのようでいて,スロー再生でみると足を踏んばり体を小さく回転させて,しっかり全身の力を拳に伝えていた。その一発でウォルドバーガーの意識は飛んでいた。
 倒されたウォルドバーガーはしばらく立ち上がれず,担架に乗せられて病院直行だったらしい。

 おそろしくケンカのつよいロシア人,アドラン・アマゴフ27歳,今後のウェルター級が楽しみになるような面白そうな選手である。


Bantamweight Dustin Pague vs. Kyoji Horiguchi
 期待の堀口恭司選手が見事にUFC初戦を制した。相手から距離をとって回りつつ,おもむろに入ってきて捨て身で強いパンチを当てるスタイル。
 初回では相手にそのまま捕まってしまった。まともに投げられてしまう場面もあり,今後に課題があるとしたらそこらへんだろう。
 
 二回には開始早々から距離をとるかと思いきや,すぐに積極的に入ってきて,右から入るワンツー。左の強いパンチをまともにペイグの顔面に入れて,それが勝負を決めていた。初回にやや懸念された相撲力も,二回では別人のように強くなっており,文句のつけようもなかった。初回はさすがに緊張していたのであろう。

 グラウンドでのパウンドを当てるセンスも抜群であった。膠着したグラウンドから執拗なパウンドで勝負が決まるケースというのは最近では珍しいのではなかろうか。
 堀口選手にとって次につながるとてもいい勝ち方であったと思う。

 相手のペイグは11勝9敗という,いわばかませ犬的な選手である。堀口選手がこれからもっと強い選手と闘うのが楽しみである。


 

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