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2015年6月28日日曜日

UFC Fight Night: Machida vs. Romero 感想

Middleweight Lyoto Machida vs. Yoel Romero
 懸念していたとおりのことが起こった、という感じであった。

 マチダはこの試合も距離を大きくとってよくフェイントを交えつつロメロの出鼻に速いパンチや蹴りを当ててゆこうという、いつもの戦法であった。じりじりと前にでるロメロのプレッシャーを避けるようにして、いつもより狭いオクタゴンのケージ際を周回していたマチダであった。
 かつては『うごきを読みにくい(illusive)』と評されていたマチダだが、さすがに何年も変わらずのスタイルではワンパターンであり、研究されれば攻略されてしまうだろう。この日もいつもととくに変わり映えもせず、持ち駒は踏みこんでの打撃のみ。いくら相撲がつよいといっても、それはディフェンスのみにいえることで、組んで攻撃につなげるということをしない。
 対するロメロは、レスリングは五輪メダリストのレベルであり、打撃も申し分ない破壊力があり一発で相手を眠らせられる。現代格闘では引き出しの多いロメロのような選手が活躍する時代ということなのだろう。
 マチダも空手に柔術に相撲と多種にわたって玄人であるのだが、組み技は防御にのみ使われるだけで、攻撃はどうしても空手流の打撃だけである。マチダのような選手は、少なくとも男子の現代格闘においては、もはや時代遅れなのでろう。

 力のあるロメロがマチダを捕まえて力まかせに倒し、ゴリゴリと削って決着がつくのではないかと予想していたが、その展開は予想以上に速かった。ロメロが強引に力まかせに行ったのだとしたら、相撲上手のマチダならしのげただろう。ロメロが組んでからが猛烈に速かった。組んだとおもったら、一瞬でマチダをマットに倒し、寝かしつけた。こういう流れるような動きが瞬時に出せるというのは、トップレベルのレスリング能力が体にしみ込んで初めてできる芸当なのではないか。
 また、レスリングの専門家のロメロだが、序盤から最終ラウンドまでずっと打撃戦であり、組みに行くそぶりすら見せなかった。最後の最後で一気に勝負をつけんとするところまで、レスリングを温存してたかのようであった。マチダはあっさり倒された。倒されると、マチダは弱い。結果は見てのとおりである。

 ロメロは運動能力が高い反面、筋肉量が多くスタミナに懸念があると以前より指摘されていた。もちろん年齢的なこともあるだろう。しかし意外なことに最終ラウンドでのTKO勝ちが多い選手でもある。
 まるで燃料タンクが二つあるかのようだが、これは自身の運動機能の生理的な違いを体験的にしっかり使い分けている、ということだろう。有酸素運動という持久戦においては人並みな消耗疲弊が目に見えてわかるが、勝機をつかむやいなやいつでも無酸素運動に移行できる選手であり、それがあの特徴的な瞬発力、爆発力となって、相手を圧倒するのだろう。まさに、火事場のクソぢから、である。これがロメロのつよさの一つの大きな特徴だろう。
 
 最後に、ロメロの精神性について触れておきたい。
 ロメロは自身を『神に選ばれた兵士』と呼んでいる。そういう精神性がないと、あそこまで狂気じみた攻撃はできないのではないか。執拗な肘によって、マチダの顔面はぐちゃぐちゃにされた。常人にはあそこまで人間の顔面を破壊できるものではない。まるで人間性を失った戦場の兵士ような無慈悲なまでの肉体破壊。もちろんトップランクの選手ならばそういう選手はいくらでもいるが、文明圏でぬくぬくと暮らしている常人にはとても出来ない芸当だとおもうし、そういう部分が傑出している点もロメロのつよさの秘密ではなかろうか。倒した相手へ与えたダメージを心配して駆け寄るマチダとは対照的である。


 では、ロメロは無敵なのか、ということになるが、私はそんなことはないとおもう。
 今回のマチダの敗北のいちばんの原因は、ロメロのつよさ以前に、マチダの劣化にあるとおもうし、それは年齢的なものだけでなく、前の試合で脳にうけたダメージによるものだとおもう。全盛期のマチダ、エヴァンスを倒した頃のマチダならば、ロメロにもじゅうぶん勝てていたのではないか。
 
 ロメロとジャッカレとの対戦がまた注目されるようになり、おそらく今年中には行われるのではなかろうか。そうなれば私は速さにおいても持ち駒の数でもトップレベルにあるジャッカレの方がつよいとおもう。

 
  

 

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