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2015年6月7日日曜日

UFC Fight Night: Boetsch vs. Henderson 感想

Middleweight Tim Boetsch vs. Dan Henderson 
 ボウチは一世一代の試合と、試合前の記者会見からして気合がここまで伝わってくるようであった。私はボウチが圧倒するだろうとおもっていたのだが、ここまでみごとにヘンドが勝つとはおもってもみなかった。

 試合前のヘンドのインタビュー映像など見るに、いかにも老けたかんじさえして、目線も焦点が合っているんだか怪しく、言葉の滑舌もわるく、過去の数試合でのノックアウト負けの後遺症がかなり進行しているのではないかとさえおもわせるようなかんじだった。この試合でボウチの強打でもってノックアウトされてしまったら、選手生命どころかこの後の日常生活にさえも支障をきたすのではないかとさえ深読みしてしまった。

 が、試合が始まれば、ヘンドのうごきは良かった。自信満々で前進してくるボウチに対して、ちょっと下がって誘い、踏みとどまって、おもむろに右が文字通り、ぱぁん!と真っ直ぐ入った。そしてさらにもう一発、得意のオーバーハンドではなく、真っ直ぐな右。そしてあのヒョードルを倒した場面をソウフツさせる右のアッパーカット。そして機械仕掛けのような無心の連打。ボウチの額が割れ、ヘンドも右こぶしを傷めたらしい。

 これまで「よっこらしょ」と野球の投球のように大きく反動をつけて放っていた右のオーバーハンドが H-bomb と呼ばれ、必殺技として恐れられていたわけだが、モーションが大きく相手に読まれ、不発に終わる試合が続いていた。体重の載った右をもっといつでも出せるようにとボクシングの基本に返って右ストレートを練習してきたのだろうか。それくらいコンパクトに中から真っ直ぐ出た、いかにも丹下段平が絶賛しそうな、みごとなパンチだった。
 
 ボウチはずっとランクを登ったり下りたりで、ここでヘンドに勝ってはずみをつけようと自信をもって臨んだだけに、負けたのは残念であったろう。序盤から足をつかったり、相撲をとったりして、老齢なヘンドのスタミナを削ってゆくような作戦でいけば、あるいはボウチが圧倒していたであろう。それをせず、試合開始と同時に真正面から向かっていったボウチは、えらい。


Heavyweight Ben Rothwell vs. Matt Mitrione 
 私は、総合格闘において腕力やタフネスさほどアテにならないものはなく、とにかくスピードこそが、という信仰をもって観戦しているのだが、この試合でもやはり手の速さに定評のあるミトリオーネが圧倒するだろう、と予想していた。
 いくらロスウェルが頑丈な選手とはいえ、重量級のパンチが一発でも先に当たった方が勝つだろうとおもっていた。

 実際、試合がはじまってミトリオーネの方がよく足をつかい、ぽんぽんと軽いパンチを当てていた。軽いといってもKO率が9割ちかい選手であり、あたれば確実にダメージがいくだろう。ロスウェルはべた足の仁王立ちで、相手の方を向いて回るだけであった。やはりミネストローネか、とおもっていたところでミトリオーネが組んで中途半端なテイクダウンを試みたのが命取りとなった。ロスウェルがぐいと締め上げるようにしてタップアウト。

 試合よりも、試合後のインタビューのロスウェルの「むぁはははは!」という作り笑いの方が印象ぶかかった。会場は一斉にドン引いていたが(笑


Lightweight Dustin Poirier vs. Yancy Medeiros
 当てカンがよく打ちあいにめっぽうつよいポリエであったが、今日もまさにそんなかんじの勝ち方だった。リーチあるメデイロに対して踏み込んでみごとに右のクロスを当て、さらに左をアゴにクリーンヒットさせて、メデロは完全に脚にきていた。そこから打撃でたたみかけるかとおもったが、体がもつれて寝技に移行し、メデロはダメージから回復できるかにみえたが立ってからもダメージは残っており、また同じようにポリエの連打が面白いようにあたっていた。
 地元で快勝できて気分もよかったであろう。
 

Featherweight Thiago Tavares vs. Brian Ortega 
 この試合が今回のベスト・バウトなのではないかとおもっている。
 両者ともに柔術を得意としており、絞め技による勝利が多いのだが、タヴォーレスはパンチで勝った試合も多いことで、ここは打撃もできるタヴォーレスが断然有利なのではないかと予想した。
 実際タヴォーレスのパンチの方がソリッドであり、序盤からよくプレッシャーをかけて積極的だったのもタヴォーレスだった。タヴォーレスのテイクダウンも何度かきまり、オルテガが腕をつかんで十字や三角締めを狙ってもまったく動じることなく防いでいた。

 ポイント的には初回、二回ともタヴォーレスだったのだろうけど、オルテガのグランドでの防御といい、フルマウントされてからのエスケープといい、実に見事だった。タヴォーレスの王道の攻めに対して、オルテガはまさにケンカ上手というかんじで、床を背にしたまま切れ味のある肘や拳のナックルパートでなく剥き出しの指第二関節をを何度かオルテガの額に当て、皮膚を割っていた。
 タヴォーレスの出血量は尋常でなく、運動能力を持続する上で無視できぬ量だったのではなかろうか。しだいに反応が鈍っていくようになり、最後はパンチが無いと思われていたオルテガのパンチがまともに入り、いっきにパウンドで試合を決めた。オルテガの見事な勝利であった。
 24歳であれだけ辛抱づよい闘い方ができ、まるでケンカの天才と呼びたくなるようなえげつない肘の出せるオルテガという選手、将来有望である。フェザー級は層が厚い。


Bantamweight Joe Soto vs. Anthony Birchak
 寝技主体のバーチャク、組んでいくのかとおもいきや立ち技の打撃一本ですばらしい攻めをみせていた。


Bantamweight Francisco Rivera vs. Alex Caceres
 両者ともにユライア・フェイバーに倒されているという触れ込みだったが、リヴェラはフェイバー相手にいい試合をしていたのに目を突かれるという実に不運で残念な結果に終わってしまったわけで、決してカセレスのように弱い選手ではない。
 リヴェラが勝つだろうとおもって観ていた。

 カセレスはパンチにまったく力がこもっておらず、あれでは誰だって喜んで相撃ちに応じるであろう。リヴェラがこれでもかとばかりに踏み込んで右のクロスを当て、左のフォローでカセレスはばったり倒された。その後パウンドまでもつれたが、はっきりとわかるリヴェラの勝利であった。
 運気復調のリヴェラの次に注目したい。
 

Heavyweight Shawn Jordan vs. Derrick Lewis
 体躯も大きく12勝のうち11KOというとほうもない強打のルイスであり、ジョーダンのようなアンコ力士体型の選手では敵わないだろう、とおもっていた。
 序盤ジョーダンは半端な距離を避け、距離を大きくとるか、おもいきって跳びこむんで倒しにかかるかではっきりしており、じつに良かった。またルイスは倒されてしまうとからっきしダメだった。ジョーダンの肘が何度かルイスの頭部顔面に落とされていたようにみえたが、ルイスはタフでケロッとしていた。ルイスはほんものの黒き野獣のようであった。

 二回にジョーダンが踏み込んで何をするかと思いきや、おもむろに上段横蹴りのような後ろまわし蹴りをくりだし、それがルイスの頬ゲタにまともにあたって、それで一気に勝負がついた。
 ショーン・ジョーダンのみごとな勝利であった。


Welterweight Brian Ebersole vs. Omari Akhmedov
 70戦ちかい戦績のエバーソウル、格闘好きだけどそれに見合うだけの運動能力がいまひとつという印象で、それを知力や作戦で補っているかんじ。しかし現代格闘のレベルには到底達しえないという印象であり、これは運動能力の高いアクメドフが問題なく勝つであろうとおもっていた。

 初回のアクメドフの蹴りを膝にうけて、試合放棄。
 初回の最後までそれを隠しとおしたのは大したものだ。

 アクメドフの強打が目だったが、相変わらずパンチが外からなのばかりで、あのままでは上位には通用しないだろう。


Lightweight Chris Wade vs. Christos Giagos
 ウェイドのレスリングのうまさが光ったが、ヒアゴの打撃もよく当たっていた。序盤は両者ともにきびきびとしたうごきをみせ見ごたえがあったが、両者とも決め手を欠いたまま疲れてしまい、試合の印象はパッとしないものになった


Middleweight Ricardo Abreu vs. Jake Collier
 コリアーはせっかくのリーチがあるのに、ハエが止まりそうなパンチしか出せない。あれでは上に来るのは難しいだろう。
 内容的にはアブレイの方が上手かったようにみえたが、判定はコリアーだった。


Bantamweight José Quiñonez vs. Leonardo Morales
 24歳と22歳の活きのいい選手同士によるみごたえある試合だった。

 

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