入念に対策を練り人事を尽くしたウェルドゥムがヴェラスケスを見事にギロチン・チョークに極めたとのこと。
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一週間たって、ようやく録画を観ることができた。
ヴェラスケスが初回から全開で攻めていってる。ドス・サントス戦では意地の対決という面もあり、両者は初回から全開で立ち向かい、また両者の歯車はよくかみ合ったかんじがした。その上でヴェラスケスの方が力で勝さっていた。
この試合も、前回のドス・サントス戦とよく似た立ち上がりであった。が、なんだか観たかんじ雑なように見える。先入観でそう見えるだけなのかもしれないが。ヴェラスケスはウェルドゥムをやや甘く見ていたのではないか、というかんじさえした。
ヴェラスケスはさほどウェルドゥムを恐れてはいなかったのではなかろうか。ウェルドゥムといえば柔術師であり、過去の試合の録画を見返せばパンチは実にナマクラであった。レスラー出身の格闘家はエリートになればなるほど、レスリングがつよくてその上でボクシングができる選手を恐れるフシがある。コテコテの武道系格闘家なにするものぞという見くびりがあったのではなかろうか。
ウェルドゥムを褒めよう。
ヴェラスケスの突進に対して一歩も下がらなかった。最後は待ってましたとばかりに狙いすましたような絞め技だったが、勝因はそれではなく、むしろ序盤から続いた打撃戦で一歩も下がらなかった点だろう。
いつもの回転の速く相手の中心線に集中するようなヴェラスケスのパンチが、この日はぜんぶ振り回すように外から出ていて、不正確であったようにみえた。それと比べるとウェルドゥムのパンチは小さく、自分の体幹正中線から相手の体幹正中線へと真っ直ぐ正確に飛んでいった。軽く出しても体重が乗っている。ヴェラスケスが強振してきても、まったく恐れをみせず、それによろこんで応じるように相撃ちに出て、また、しっかり先に当てていた。打撃とくにパンチでウェルドゥムの方が上手かった。これがまずヴェラスケス陣営にしてみれば最大の誤算であったろう。
ヴェラスケスの前進に対してはタイ・クリンチで徹底していた。中量級では当たり前の防御であり攻めであるが、ヘビー級では珍しいかもしれない。 膝を突き上げるだけでなく、体重を相手の首に預けるようにして、ヴェラスケスのスタミナを奪っていった。
はっきりと、ヴェラスケスの完敗であった。
高地順応の所為だという声もあるが、高地で生活すれば赤血球の量は増えても、疲労が抜けぬために激しいトレーニングをするのは難しいときく。だから勝因は必ずしも高地のせいだけではないと思う。もちろん、やれることをすべてやりつくしたウェルドゥムの精神面での充実は大きいとおもわれるが。
ヴェラスケスが低地で練習を続けたのは、単に高地を甘くみていたのではなく、それはそれで意味があったのだろうとおもう。打撃にいまいち爆発力の感じられないウェルダムはヴェラスケスの強いプレッシャーを伴った打撃戦では敵わないだろう、と我々ファンが予想していたように、ヴェラスケス陣営も同様な予想をたて短期決戦という意気込みがあったのではないか。それで低地トレーニングによる瞬発力に期待したのではないか。ヴェラスケスの試合展開もそんなかんじであった。
しかし作戦としては、失敗であった。ウェルドゥムの方がよく研究してきており、ヴェラスケスのすべてを正面から封じ、打ち勝って、絞め落とした。見事な勝利であった。
幸い、ヴェラスケスが頭部に受けたダメージは軽微であり、次の試合への影響は少ないであろう。次回のヴェラスケスはもう少し慎重に行くのではないか。
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