Light Heavyweight Anthony Johnson vs. Daniel Cormier
やはりコーミエの方がつよかった。開始早々いきなりジョンソンの右が当たり、コーミエがつんのめるようにして倒れる場面があったのだが、コーミエはよくしのいだ。予想どおりコーミエは徹底して前に出て組みに行き、組めば体重をうまく相手に乗せてジョンソンのスタミナをどんどん奪っていった。
初回の終了間際に、コーミエは肘でジョンソンの目の横のあたりを割った。そこからジョンソンの戦意がどんどん減衰していったのがわかった。打撃によるダメージというより、精神的な脆さのようなものが見て取れた。セコンドに「深呼吸をしろ!」と怒鳴られて、はっと我に返るほど、気持ちが動転していたかんじだった。
ジョンソンのような選手は超人的な瞬発力で上り調子で来ればとほうもなく強いが、壁にぶつかったとき、わりあいとあっさり闘志がゆらぐところがある。2R開始のブザーが鳴ったときのジョンソンの表情をみて、コーミエは勝利を確信しただろう。
コーミエが勝つべくして勝った、という感じであった。
緊迫して実に面白い、格闘ファン冥利につきる試合であったが、さらに絞め技で決まっただけに脳震盪など後遺症として残りやすい頭部へのダメージが少なかったことも付け加えておきたい。コーミエの防衛戦、あるいはリマッチにしても、またベストなコンディションで試合が出来るだろう。
Middleweight Chris Weidman vs. Vitor Belfort
ベウフォートの皮膚のたるみが気になった。急激な減量のせいなのだろう。あるいはテストステロン投与を止めたせいなのか、よくわからないが、見た感じ良い状態とは思えなかった。
初回から両者全開でぶつかり合い、最初に当てたのはベウフォートの方だった。右のフックがワイドマンの顔面に当たり、ワイドマンが後退するという場面があった。そこで一気に勝負がつくかとおもったが、ワイドマンはよくしのいだ。
両者熱くなったところで、もう一丁ぶつかるか!というところで、レスラーは絶妙なテイクダウンに行き見事に決まる。そこからは体格とパワーで勝るワイドマンの独壇場であった。
終わってみればワイドマンが圧倒したが、あのワイドマンがぐらついて後退した場面があったのが印象に残った。
ワイドマンは次にロックホールドと対戦するのだろう。両者体格的に五分五分だし、打撃の破壊力をもった選手どうし、これは相当なぶつかり合いになるんだろう。負けた方が壊されるのは目に見えている。できればやらせたくない試合であるが、すごく楽しみである
Lightweight Donald Cerrone vs. John Makdessi
序盤からマクデッシがよく足をつかって攻め、左のジャブ、フックがタイミングよく当たり、いい感じであった。百戦錬磨の猛禽のように相手を見据えるセローニはあわてる様子もなかったが、なかなかやるな、とはおもっていたのではなかろうか。あのまま判定になればマクデッシだったかもしれない。が、セローニの攻めは変化に富んでおり、パンチの後に半身で突き出した肘など見事にマクデッシのアゴをとらえ、蹴りもだんだん当たるようになっていった。セローニのパンチも、ボクシングや空手ではあり得ないような前進しながら拳を連続で出すような攻めをみせ、マクデッシはカウンターを合わせきれずに後退していた。
最後は左のまわしげりだったか、マクデッシの顔の側面にあたり、マクデッシはたまらずタイムのポーズをする。アゴが折れたらしい。どの部分が折れたかにもよるが、顎関節部分だと治癒が厄介である。これからが期待できるすぐれた格闘家であるだけに、早期の回復を祈りたい。
Heavyweight Travis Browne vs. Andrei Arlovski
異常人のブラウンが打撃専門家のアロフスキを圧倒するのではないかとおもっていたが、蓋を開けてみれば、打撃の専門家がきれいなフォームで繰り出すパンチの破壊力はすごかった。バスン、バスンと突き抜けるように、アロフスキのパンチがことごとく当たり、ブラウンは棒立ちで足がもつれっぱなしであった。
倒れなかったとはいえ、ブラウンの受けた脳震盪はかなり重そうであり、今後打撃に対する反応と抵抗力はさらに低下してしまうのではなかろうか。
Flyweight Joseph Benavidez vs. John Moraga
くりくり坊主頭で高度経済成長期の日本の地方の少年のような風貌のモラガ、外見だけでなくたたかいぶりにも負けん気が出ていて、積極的に前に出ての打ち合い、とてもよかった。組んだ状態からフロント・スープレクスのような強引な投げ技もみせていたが、これはベナヴィデズがよく対処した。
試合が膠着すれば、変化に富んだベナヴィデズの方がやはり上手であった。結果、つねにベナヴィデズが一歩先んじる形で試合が進み、おわってみれば3-0の判定であった。
Flyweight John Dodson vs. Zach Makovsky
速い出入りのドドソンに対し、マコフスキの左がよく反応してドドソンの顔面によく当たり、意外にもドドソンを苦戦させていた。
ストリーミングが不安定となり、勝敗を決した3Rをよく観戦できなかったのが残念であった。
Welterweight Dong Hyun Kim vs. Josh Burkman
バークマンの豪快なスウィングが当たってキムの足がもつれ、あわやという場面もあったが、キムはよくピンチをしのいだ。組めばキムの方が明らかにうまく、というよりバークマンが下手だった。キムは徹底的に組んで寝技で仕留めた。
これと似た対戦で、岡見=ボウチ戦を思いだしながら見ていた。岡見も明らかにボウチよりうまかったのだが、ジャブでポイントは取れても決め手に欠け、それでもって相手を仕留められるわけでなし、結局ボウチのケンカ式連打を当てられてマットに沈んだ。キムは徹底して相手の下手な土俵で闘って、それをしっかり仕留めにつなげた。キムをほめるべきだろう。
Middleweight Uriah Hall vs. Rafael Natal
ユライヤ・ホールは斬れ味のある打撃主体の全身凶器であるけれど、スパッとした一発を狙ってなのか、攻めが単調で工夫がみられなかった。一方、サポの方が相手との距離をなくそうと積極的に出入りし工夫し変化していた。
最終ラウンドは判定では自分が有利と踏んだのだろうか、ホールはとたんに消極的になり、さらに距離をとるようになった。ああいう一撃をもったオフェンス力ある選手が、カッコばっかりつけたり、あるいは判定勝ちにこだわってセコい試合をすると、実に興ざめである。
割れた判定でサポが勝ったが、ユライヤにとっていいクスリだろう。メイウェザーのこないだの試合がいかに世間で不評だったのか、よく考えるべきだろう。
Lightweight Islam Makhachev vs. Leo Kuntz
クンツもよかったが、マカチェフが圧倒した。マカチェフはサンボの達人らしく、この日も払い腰のような投げ技を見事に決めていた。サウスポのスタンスで踏み込みざまにお辞儀するように大きなオーバーハンドの左を出していた。ストレートより振り回すパンチが多く、どれもナックルが返っていないオープンブロー気味で、むき出しの指関節部分を相手の頭部に当てていたのが気になった。厳密にはあれは反則になるのではないか。
Flyweight Justin Scoggins vs. Josh Sampo
23歳のスコギンスは半身の構えで頻繁にスタンスを変えていたが、中盤以降はサウスポで定着、右足をジャブのように使うために足の位置がかなり極端な半身であった。リーチのある多彩な蹴りがかなり相手にとって煩わしかったようではあるが、それが決め手になったり突破口を開くほどのものでもなかった。
若くして打撃のうまい選手であったが、私の好きな豪傑というより、ちょっとした小細工上手という印象であった。
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